チェコスロバキア(現チェコ)出身の作家ミラン・クンデラが7月11日、仏パリ市内で死去した。94歳だった。

 仏報道によると、長く病気を患っていたという。小説『存在の耐えられない軽さ』などの作品で知られる。長年、ノーベル文学賞に近い作家と言われ続け、多くの現代作家に影響を与えた。

 1929年、チェコ東部ブルノ生まれ。共産党体制下の閉塞した生活を描いた67年の長編小説『冗談』が高い評価を得た。68年に起きた民主化運動「プラハの春」が旧ソ連の武力介入で弾圧された後、政治にも積極的に関わっていた為、チェコ国内で著作が発禁処分となった。75年にフランスへ移り、北西部レンヌの大学で比較文学を教えた。81年に仏国籍を取得。79年にチェコの国籍を剥奪されたが、2019年にはチェコの市民権を再取得した。

 「プラハの春」を時代背景とした84年の恋愛小説『存在の耐えられない軽さ』は世界的ベストセラーとなり、その後リチャード・カウフマンにより映画化された。

 著者もデビュー作となる短編集『可笑しな愛』には大きな影響を受けた。男女の恋愛模様を奇妙ながら、どこか共感を呼ぶ独自のスタイルで描く稀有な作家だった。心から冥福を祈りたい。