日本出版販売株式会社、株式会社紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社は、書店主導の出版流通改革及びその実現を支える合弁会社設立に向けた協議を開始する基本合意契約を6月19日に締結した。

 「紀伊國屋書店」や「蔦屋書店」など競合他社の書店が手を結び、仕入れや流通を共同で行う新会社を設立することが発表された。書店の減少に歯止めが掛からない中、ついに業界内で手を取り合う決断が下されたようだ。

 書店主導による出版流通改革に取り組むため、3社による協議を開始する。3社が持つ販売データを共有化し、AIを使った需要の予測に基づく発注システムを共同運営することで、本の返品率を減らし、流通の効率化を進めるという。また、書店横断型サービス・共通アプリなども視野に入れた新たな販売促進施策も講じる。

 なお、3社による合弁会社となる新会社は今秋の設立を目指すとしている。3社が展開する書店は、全国であわせて1000店近くにのぼるが、ほかの書店にも参加を呼びかけることで業界全体で書店経営の改善を進める狙い。

 出版文化産業振興財団によると、日本全国における書店の数は過去10年間で約3割減少し、全国市区町村のうち4分の1を超える自治体が書店ゼロ市町村だという。(2022年9月現在)

 発表において、紀伊國屋書店の代表取締役会長兼社長である高井昌史氏は「まずは3社で、それぞれの書店としての良さを生かしながら、新しい仕入れの仕組みを整備し、同じ志をもって取り組んでいただける他書店とも手を携えていくことを目指します」と業界全体で取り組みたい意向を述べている。

 今年に入って「MARUZEN&ジュンク堂書店」渋谷店の閉店など、大型書店は都心においても苦戦を強いられている感がある。その一方で、令和になって独立系書店やリトルプレスなど取次を介さないような個人経営の業態は「本の雑誌」でも特集を組まれるほどブームになった。

 破滅派も2021年に出版レーベルを立ち上げ、すでに三冊の書籍を送り出している。その過程を主宰の高橋文樹自ら綴った不定期連載「出版社破滅派の作り方」で、出版の流通システムがいかに特殊であるか分かりやすく記されている。今後この流通が大手の旗振りで本当に変わるのか、注視していきたい。