「チャーリーとチョコレート工場」など児童文学の名作で知られる英作家ロアルド・ダールの作品中の表現が出版社によって変更され議論になっていた問題で、児童文学の出版社パフィンは変更しないまま発売すると方針を変更した。

パフィンは先に、ダール氏の作品について、現代の読者により適したものに更新したと発表。「太った」(fat)や「醜くて」(Ugly)といった、登場人物の容姿や体重に関する記述などが、有害なコンテンツをチェックする段階で削除されていたが、これについて激しい論争が起きていた。

パフィンを所有する英ペンギンブックスのフランチェスカ・ダウ編集長は、「我々はこの1週間の議論に耳を傾け、ロアルド・ダールの本が持つ並外れた力を再確認すると共に、別時代の物語が新しい世代にとって意味あるものであり続けるにはどうしたらよいのかという、きわめて現実的な問題を再確認した」と説明した。

出版社は「BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」(邦題「オ・ヤサシ巨人BFG」) や「チャーリーとチョコレート工場」(同「チョコレート工場の秘密」)などの作品について、現代の読者により適したものに更新されたと発表。ロアルド・ダール・ストーリー・カンパニー(RDSC)は、2020年から続く見直しプロセスの過程で生じた編集は、「小規模かつ慎重に検討されたもの」だと説明した。

そうした中、英スーナク首相の報道官は、フィクション作品は「修正ではなく維持」されるべきだとした。

小説「真夜中の子供たち」や「悪魔の詩」で知られる英作家サルマン・ラシュディは、「ロアルド・ダールは天使ではなかったが、これはばかげた検閲だ」とツイート。

ダール氏の作品の見直しは、RDSCとパフィン、児童文学における包括性とアクセシビリティを目指す団体Inclusive Mindsが連携して行っていた。

2月23日にはカミラ王妃が作家や出版関係者との会合で、「表現の自由や想像力を制限しようとする人々に邪魔されることなく、自分の使命に忠実であり続けてほしい」と語った。

パフィンは、これらを含めた13作品を全集として、修正しない状態で発売する予定。

1990年に74歳で死去したダール氏は、いまでも人気のある児童文学作家の1人。その一方で、生涯を通じて発信された反ユダヤ的な発言をめぐり、非常に問題視された存在でもあった。2020年にはダール氏の遺族が、「ロアルド・ダールの反ユダヤ主義的な発言によって、人々を長く傷つけてきた」ことを認識し、謝罪すると表明した。

ちなみに、破滅派では昨年11月にこの話題を先取りしたような「検閲」特集の『破滅派18号』で同人たちが各自、検閲をテーマに作品を寄稿している。時代が破滅派に追いついた今こそ読んでほしい一冊だ。