今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2022年10月号

・小池水音による「息」が掲載。喪失を見つめ、過去の時間に暖かな息を吹き込む感動作。そのほか、福永信による「同一一一人物」、佐伯一麦による「月山道」も。

・黒田夏子による新連作「うつつ身」が開幕。

・多和田葉子と岡田利規による対談「フィクションの湧き出る場所」では、小説と演劇の違い、現実世界との距離…三島賞受賞作『ブロッコリー・レボリューション』をテーマに国際的創作者が語り合う。

・『第54回新潮新人賞』予選通過作品が発表される。

文學界 2022年10月号

・柄谷行人による講演「『力と交換様式』をめぐって」が掲載。聞き手・國分功一郎/コメンテーター・斎藤幸平が務めた。

・創作では、三木三奈による「消火器」が掲載。「人生が思いもしない方向へ転がってゆくのを感じる――必ずやらかす私は、なぜ消火器を手に取ったのか」

・【特集】「もうひとつの芸術史」として、芸術や哲学の力を借り、ありえたかもしれないもうひとつの歴史を見出だし、醒めない悪夢からの出口を探る。岡﨑乾二郎のインタビュー「『感覚のエデン』を求めて」(聞き手・山本貴光)や、鴻巣友季子×川本直×青木耕平による鼎談「アメリカに抗するアメリカ文学」などさまざまな角度から芸術史について考える。

・8月に亡くなった精神科医で多くの著作を残した中井久夫氏。斎藤環が追悼文「予言としての『対話とケア』」を寄稿。

群像 2022年10月号

・【特集「弱さ」の哲学】として、片瀬チヲルによる「カプチーノ・コースト」や永井玲衣×三木那由他、哲学者ふたりによる回り道の真摯な対話「「弱さ」のこと……」、稲垣諭による新連載「「くぐり抜け」の哲学」など一挙掲載。

・創作では、上田岳弘「多頭獣の話」、長島有里枝「チャイとミルク」、宮内悠介「国歌を作った男」が掲載。

・奈倉有里による思いのままにロシアを語る、愛に満ちた連載「文化の脱走兵」がスタート。

・惜しまれつつ亡くなった中井久夫氏、世界的ファッションデザイナー三宅一生氏について、鷲田清一による特別寄稿「中井久夫、そして三宅一生――生きてあることの地肌へ」が掲載。

・松村圭一郎「旋回する人類学」、若松英輔「見えない道標」が最終回を迎える。

すばる 2022年10月号

・佐川光晴による新連載「あけくれ」がスタート。

・創作では、米田夕歌里による中編「うちの庭」、椎名誠による短編「卍橋商店街の歩きかた」、チェ・ウニョンによる短編「ほんのかすかな光でも」(訳・解説/牧野美加)が掲載。

・9月5日に最新短編集『掌に眠る舞台』(集英社)を上梓した小川洋子とミュージカル俳優の福井晶一による対談『 「舞台」という奇跡を描いて』。

・宮本輝による連載「よき時を思う」が最終回を迎える。

以上、2022年9月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。