2019年5月に髙井ホアン著『戦前反戦発言大全』『戦前不敬発言大全』を刊行するなどしている有名出版社パブリブだが、『デスメタルアフリカ』に始まる「世界過激音楽」シリーズも様々な音楽ファン達から好評となっている。その「世界過激音楽」シリーズの第15巻目として、松原誉史『ヴァイキングメタル・ガイドブック』が出版された。

これまでも世界過激音楽シリーズは様々な「メタル」を紹介してきたが、今回シリーズが踏み込んだのは北欧の「民族メタル」の世界であった。『ヴァイキングメタル・ガイドブック』では、スウェーデンの「Bathory」というバンドに始まる、北欧ヴァイキングの世界観を称揚する民族メタル「ヴァイキングメタル」を紹介していく。ブラックメタルにおける反キリスト・サタニズムといった様式がそもそもキリスト教の枠から生れており、矛盾から抜け出せていない……という問題提起から始まったヴァイキングメタルの世界が、どの様に土着の宗教などの価値観を取り入れ、発展していったのかを知る事が出来る一冊となっている。

『ヴァイキングメタル・ガイドブック』ではヴァイキングメタル、そしてパイレーツメタルの237バンド、415枚の音源が紹介されており、またコラムも数多く収録される等毎回の「世界過激音楽」シリーズに相応しい重厚なボリュームである。ヴィジュアル重視の路線に欠かせないミュージックビデオなども多く紹介されている。主に紹介されているバンドは以下の通り。

Bathory 反キリスト教の矛盾気づき、早逝したヴァイキングメタルの始祖!
Enslaved ヴァイキングメタルの代表的存在でありながら徐々にプログレ化!
Mithotyn 知る人ぞ知る、後のFalconerやKing of Asgardの母体となった伝説!
Einherjer ヴァイキング黎明期築いたミドルテンポ古ノルド語「孤独な戦士」!
Thyrfing Naglfarの創設者も在籍する北欧神話の魔剣ティルヴィング!
Týr フェロー諸島出身、捕鯨文化保護主張しシーシェパードから圧力!
Alestorm 冗談で「トゥルー・スコティッシュ・パイレーツメタル」標榜!

まだまだ広く知られているとは言えないが、民族を越えて知られる価値のあるこのジャンルを俯瞰できる素晴らしい一冊となりそうだ。

パブリブは、以前より「世界過激音楽シリーズ」を刊行し、『デスメタルアフリカ』『ヒップホップ東欧』の様にこれまで日本であまり紹介されてこなかった世界各国の音楽事情や、『デスコア・ガイドブック』『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』シリーズなど体系的なガイド書籍を編集・出版しており、各種ファンやマニアより高い評価を得ている。

松原誉史『ヴァイキングメタル・ガイドブック』は、5月11日前後より出荷され、5月中旬には全国書店、Amazon、CD・レコードショップなどで販売されるとみられる。価格は税込2640円。詳しい情報は下記リンクも参照のこと。