今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

 

新潮 2019年4月号

・トップに、芥川賞作家町屋良平の「ショパンゾンビ・コンテスタント」。音大をやめた小説家志望の「ぼく」と魔法のような音を奏でる同級生のピアニストの交流の行方は如何に。

・他に大前粟生「ファイア」、大竹昭子「カウチサーフィン」、瀬戸内寂聴「宝物」などが掲載される。

・話題作「新復興論」の著者、小松理虔が送る「あなたの日常に福島はある」では、3.11後数年を経てなお続く福島への様々な目線を解いていく。

・川端康成の自殺直前の書簡から、彼の最後の日々と心境を探る深澤晴美「川端康成最後の書簡――「不浄」ということ」。

1月29日に亡くなった橋本治の追悼企画として、高橋源一郎の「ありがと、じゃあね」、松家仁之「如是我聞」が掲載される。故・橋本治への二人の思いはどの様な物だろうか。

 

文學界 2019年4月号

・トップは前月号に続いて川上未映子の「夏物語」、後編である。あたらしい時代の妊娠・出産を巡る物語はどの様な結末を迎えるのか?

・こちらも橋本治の追悼企画として、関川夏央「九十八まで生きるんじゃなかった?」が掲載される。

・第49回九州芸術祭文学賞の発表と、最優秀作の平田健太郎「兎」が掲載される。五木寛之・又吉栄喜・村田喜代子ら選考委員による選評も。

・エセーに篠原雅武「道端で男が倒れた」、くどうれいん「雪はおいしい」。

・第124回文學界新人賞の中間発表も掲載される。

群像 2019年4月号

・橋本治の絶筆論考「「近未来」としての平成」がトップを飾った。橋本が見つめていた(そして最後を迎えられなかった)平成の姿はどのような物だろうか。

・橋本治の追悼企画として保坂和志「自分という反‐根拠」、藤野千夜「言えなかったこと」、船曳建夫「おーい、橋本」が掲載される。多くの人に愛された作家故に多くの語り口があるだろう。注目である。

・また、高橋英夫の追悼企画として三浦雅士「父・小林秀雄と闘い終えて」も掲載される。

・特集は「文学にできることをⅢ〈新鋭創作・評論〉」。創作に、藤代泉・小林エリカ・李琴峰、評論に矢野利裕・石橋正孝と話題性のある執筆陣が並ぶ、注目企画である。

・古井由吉ロングインタビュー「生と死の境、「この道」を歩く」が掲載される。聞き手は蜂飼耳である。

 

すばる 2019年4月号

・トップ小説は古川日出夫の「焚書都市譚」、小林エリカの「トリニティ・トリニティ・トリニティ」の二作が並んだ。

・加藤典洋の講演録「「はらはら」から「どきどき」へ――村上春樹における「ユーモア」の使用と『1Q84』以後の窮境」では、村上春樹作品とユーモアの絶妙な関係を語る。

・すばるスペシャル2は「平成と家族」。瀧波ユカリとトミヤマユキコの対談に加え、「私たちの曖昧でネオい結婚」として辻仁成、金川晋吾、荒川和久のエセーが並ぶ。

・すばるの橋本治追悼企画は、内田樹「橋本治さんは仏さまのような人でした」と茂木健一郎「根っこが大地につながって。」である。4誌の規格を通し読みして追悼するのも良いかも知れない。

 

以上、2019年4月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。