福山雅治と私

山谷感人

エセー

1,768文字

 これも郷土史研究の一環である。

 福山雅治と云えば、長崎市での逸話は多い。
 曰く、高校時代に彼が停留所に居ると、バスに乗っている女学生が彼を観ようと左の窓側に集まりバスが横転しようとなった。私が長崎市に帰郷後も、たまたまあんまり美味しくないラーメン屋の上に住んでいたのだが、福山先生が学生時代、毎日のように食していた、と語った故、連日、大行列なるのを窓の下に見ていた。更に現在、長崎市でタクシー観光をしたら世界大三夜景の一つである稲佐山の麓、先生の実家も案内しているらしい。更に更に、先生が長崎市に来た時は、信号が全部、青になるらしい。危険だ。
 九年前。
 先生が最後に長崎市でライヴをやった夜、往時、小金持ちであった私はバーで呑んでいた。すると女性が多数、訪れた。聞くと「福山に会いに来ました〜」なるハナシ。私は「ライヴ行けて良かったね」と述べたら「いいえ、チケットは取れなかったけど、福山が長崎市でライヴする空気を吸いに来ました」なる最早、宗教なるハナシ。ガールは六人連れだったが、土佐や長州、会津などと住まいも違うし、そもそも、snsで福山繋がりの関係で長崎市で初めて遭った仲だと云う。私は絶句した、最早、ザ・ビートルズの世界じゃないか……。その中で唯一、ライヴに行けて先生の御尊顔を得た女性は「正規ではチケット無理だった故、転売で五十万で買った」なる更に衝撃的な台詞を述べた。まだ、そうしたモノに対して、時代が緩かったのだろう。
 現在。
 私はルンペンに落ちぶれている。親友の破滅派・主幹、髙橋氏が「彼は(私)長くないだろう。最後に顔を視ておくか」みたいなノリで四月中旬、来崎した。まあ酔いどれで親友交歓として不毛だった流れは興味が有る人向けで、どっちかが書くから置いておく。
 高橋氏と云えば有能な情報を得るウェブ技師でもある(私はパソコンを持たぬ故、良い肩書を識らない)。文芸の事はさておき、その彼を敬っていた私の元に来た。ネットで福山先生の無料ライヴ長崎市情報。
 長崎市に十月、サッカー、ラグビー場や、その横に建てるホテルや複合施設施設が出来て、その、こけら落としに福山先生が演るのは聴いていた。私は先生の音楽性に全く興味がない。米国南部のカントリーやブルース、そこから派生した旧いロック好きな私とはかけ離れているジャンルだ。だが然し、前記したように福山先生のグルーピーが訪れるだろうし、早くも経済効果は数億円と報じられていた。
 無料ライヴをネットで受け付け開始の午前四時。私は牛乳を飲みながら、まあ大丈夫だろうで楽観して三十分後くらいにチェックしたら既にアクセス・ナンバーが五千後半であった。キャパに二万五千人である。以前、バーで遭った女性達は一桁レヴェルであろう。
 やがて情報として、まだ確定ではないが、先着八千人の長崎市の民は優遇なる流れであった。私は五千八十三番、現在は孔子廟の上に住む長崎市の民である。
 然し、前記したように私はかの福山先生に全もってく興味がない。偶々、街なかで見掛けても完全スルーする。
 では何故にチケット争奪戦に参加した? と問わたらルンルン・ルンペンとして、売れるな……と思ったからである。
 無論、現在は転売。御法度である。犯罪、絶対に駄目! だが然し、私は二席分を予約した。私が身分証明書を見せて、連れの何十万を払っても福山! なるグルーピーを案内しても合法である。興味がない私は一曲くらい聴いて帰宅すれば良い訳である。
 そこでsnsとかのスキルが無い私は高橋氏に「福山先生のチケットが、ほぼ確実に入る。ニ席。さふして私は身分証明を見せて入るか一曲で帰宅する。連れのグルーピーは好き好んで福山の為には金銭を惜しまないだろう。最早、ルンペンで、さふしたスキルがないからネットで探して欲しい」 とラインした。折り返しに瞬時、高橋氏から「グレーの可能性が有るから、やらない。逆に君、福山雅治のライヴ・レポートを書いてよ」なる返送が来た。
 こうして、私は全く興味が無い長崎市のスタァ、福山雅治を観る事になるだろう。前記したように米国南部の音楽を愛好する私には苦痛であるが、こうなれば最早、セットリストを鑑みている。そうして、ルンペンだから、チケットは却下〜になれば、それはそれでネタになる。
 全国の数億円以上の経済効果をもたらす福山雅治グルーピーをよ、十月に長崎市で逢おう。

 

2024年6月13日公開

© 2024 山谷感人

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