山谷流ノンアルコール

山谷感人

エセー

1,508文字

 壇流クッキングへのオマージュ

 先日。適当に壇一雄に就いて、を書いたら東北在住の知人から壇流クッキング、面白いよね! なるメールが届いていた。壇流クッキングとは自称・世界一の食通の彼が料理を語るエセーである。レシピは常に「お好みの分量で入れて〜適当にアレンジして〜自身の良い具合に〜」なる、そりゃ調理する本人は美味いだろ! ガチな料理本の界隈では発禁レヴェルの内容である。然し、メールが届いた流れで山谷流ノンアルコールを彼に捧げる。
 牛乳を飲む。

 朝は、目醒めて飲む牛乳は「この為に生きている」と想う程に美味い。ビアなぞクソだと感じる。だが然し、アドバイスすると、そのうちコーヒー牛乳が飲みたくなる。やがて軽い気持ちでカルアミルクになる。二日で君はカルアだけを喇叭呑みになるから不可。
 運動をする。

 躰を動かしていたら飲酒欲求は無くなる。第一、歩きながら呑む行為は近隣の目を含めベテランの酒徒でなければ御法度。アメリカなら摑まる。やがて君はお気に入りの公園を見つけるだろう。だが然し、待ち構えたかのように、朝から日本酒ワンカップのルンペンと仲良くなる為、これも不可。
 読書をする。

 明治から昭和中期までの日本の作家は、ほぼアルコール依存症な故、完全に不可。
 食べる。

 確かに腹が満たされれば、飲酒欲求は無くなる。だが然し刺身を喰らいたいな、焼き鳥を数本……。となる、結句、横には酒があり金銭的にも高くつくので、これも不可。
 骨折をする。

 いきなりハードルが上がったが、私は昨年の春、泥酔して左肩を折った。利き手だし相当な激痛であった。横になったら立つまで五分はかかる。汚いハナシ、トイレットに間に合わず漏らした事もある。だが往時、私はルンペンハウスなる集合住宅に住んでいて、そこのルンペンが「買い物をして来ようか?」でパシって大量のビアを届けて来る。ルンペンの飯代も払い、宴もたけなわ、金銭ヤバいなになる為、完全、不可。
 脳病院に入る

 私は、そのルンペンハウスの館長に所謂、脳病院に入れられた。全く汚点とは思わないが、色々なテストを受けて「アルコール多可以外は普通」と告げられた。逆に普通なる医師の台詞に反発していた。やがて三ヶ月くらい、ゆっくりするかな〜と思ったが、ルンペンハウスの館長が私を入院させたらキックバックで二十万円、懐に入っていた、と識り三週間で任意退院をばした。そうして同じような輩と近くのコンビニで朝、夕と散策がてら一気呑み大会すらしていた為、これは完全に不可。
 自決する。

 コレまたハードルが上がったが、十年くらい前、有名な日本の僧が、遺書を書いて自決している。曰く、わたしには生活に関して何の不安もない、だが然し自決と云うのも一つの生き方である。なるへそ、そう云う考えも有るだろう。全く否定しない。だが然し、アルコールを止めたくて自決しても他界後は、何にもない空間しかなく、アルコールも飲めないぜ! になる。私は識る人ぞ識る怪奇研究者である。深夜の墓場なぞを水木しげる超えで好んで歩く。無論、立ちションする、ビアの空き缶を適当な墓に、御供えモノとして置く。先に他界した愛する祖母、ヒバリと云う友人と賭けをしていた。所謂、他界したら必ず幽霊として私の前に来いよ、と。夢には、ちょくちょく訪れるが義理堅い祖母もアバンギャルドな友人も、霊で訪れて呉れない。故に、そうしたモノだから現世で断酒を志すより呑んだ方が良いから完璧に不可。

 結句、アルコールに関する苦悩は、ここまで記したように他愛ないモノだ。暴力や犯罪、家庭不和にならない限り。この雑文を読んでいる君も呑んでいるだろう? 私は冷蔵庫のストックがなくなる故に、手を振るわせながら買い出しに行く。
 お躰には気を付けて。

2024年6月11日公開

© 2024 山谷感人

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