超短編小説「猫角家の人々」その33
太郎は、まずは、キメセクのVIPルームで「風邪薬」を一発きめる。めくるめく陶酔の世界だ。3-4時間は興奮が持続する。帰り際、ヒポちゃんは、小さなポリエチレンの小袋に入った結晶を3回分くれた。「特別サービスよ」という。ヒポちゃんは、キャバクラのホステス以外に「風邪薬の売人」もやっていたのだ。
自宅に戻った太郎は、残った「風邪薬」を大事にしまっておく。高価なものだ。大切に使わないと。誰かが、太郎がシャブをやっていると警察に匿名で垂れ込む。数日して、練馬警察が太郎の自室のガサ入れに入り、太郎を覚醒剤所持で現行犯逮捕する。誰がたれこんだのか?猫角蜜子に聞いたら分かるかもしれない。
覚せい剤取締法に定められている罪状には、輸入、輸出、所持、譲渡、譲受、使用、製造がある。この中で、現実に一般人が罪を問われるのは、所持、譲渡、譲受、使用だ。10年以下の懲役となる。営利目的の場合、つまり、売人は、20年以下の懲役と重い刑が下される。
覚醒剤で逮捕されるケースのほとんどが尿検査による陽性反応が出た場合だ。覚醒剤は使用してから2週間程度で陽性反応が消える。陽性反応が出なければ、逮捕されることはない。また、利尿剤を使って無理やり覚醒剤成分を体外に排出してしまえば、3日ほどで陽性反応は出なくなる。だから、シャブ中ならば必ず陽性反応が出て捕まるというわけではないのだ。
覚せい剤反応は、髪の毛からも検出できる。髪の毛の方の陽性反応は、一度覚醒剤を使えば当分の間消えない。警察では、髪の毛の検査までは、原則、やっていないようだ。だが、シャブ中は、万が一を考えて、頭を坊主刈りにする場合があるようだ。野球の喜代原のように。
太郎は、自室の中で覚せい剤を隠し持っているのを見つけられた。尿から陽性反応も出た。よって、覚せい剤所持と使用の両方の罪を問われる。入手先を追及されるが、言を左右にして口を割らない。キャバクラ、キメセクのかわいいヒポちゃんから買ったとは、口が裂けても言えない。女子の為に秘密を守るのが、男子たるものの矜持だと信じているのだ。変なところで男気を発揮する太郎であった。(続く)
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