超短編小説「猫角家の人々」その31

moonkaguya

エセー

1,022文字

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超短編小説「猫角家の人々」その31
猫角姉妹は、経営する介護会社の中核施設である「ネコネコハウス真ん中」に問い合わせしてきた「カモ」に着目した。70代後半の認知症の母親を持つ息子、阿蘇太郎、56歳だ。痴呆の老母を抱え、仕事が出来なくて困っている。もともといた会社はリストラで首になって、今は、派遣で働いている。時給は1280円だ。危険物取扱主任の資格を持っているので、時給が少し高い。

なるべく安い施設に母親をぶち込んで、生活費を稼ぐために働きに出たいという。女房子供は、とっくに愛想をつかして出ていっている。離婚したらしい。現金はないが、10年前に死んだ父親が遺した不動産や株券がそこそこあるらしい。だが、名義は全て母親だ。息子が勝手に処分するわけにはいかない。権利書も印鑑もどこにあるのか、息子にはよくわからない。銀行の貸金庫の中かもしれない。本当にどれくらいの不動産を持っているのかも、いまいち、はっきりしない。呆ける前の母親は、息子に財産を収奪されるのを恐れて、財産隠しをしたのだ。それに、実家にある書類をいくら眺めても、息子には何のことだかほとんど理解できない。あまり、頭の切れる人物ではなかったのだ。

この息子に、母親の財産を引き出す犯行を持ち掛ける。勿論、酒の席でだ。息子は財産は激しく欲しがる。50代後半になって、生活のために働きたくないのだ。できれば、働かずに、毎日、好きなことをして暮らしたい。キャバクラ通いもしてみたい。だが、母親の財産を息子が勝手に引き出せば、横領になることくらいは知っている。だから、自分が母親の成年後見人になって、犯行の主役を演じることは嫌がる。

猫角姉妹は、代案を提示する。猫角蜜子が、介護福祉士の資格で、老母の成年後見人となることを役所に申請する。首尾よく認可されれば、老母の財産に手を付けて、息子に渡す。猫角蜜子は、手数料として3割をいただく。当時、成年後見人を親族以外が引き受けるケースが増えていく過程にあった。弁護士、司法書士以外に、10%程度は、介護福祉士が後見人に選出されたのだ。猫角姉妹は、そこを狙ったのだ。

だが、欲深い息子、阿蘇太郎は、3割は取りすぎだと同意しない。「この話はなかったことにしてくれ」と立腹して言い出す。仕方なく、2割で手を打つ。こうなったら、別の手口で、婆さんの財産を丸ごと収奪するしかない。「この馬鹿息子が―。欲張りやがって。」欲張っているのは、猫角姉妹である。(続く)

2023年10月2日公開

© 2023 moonkaguya

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