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おんなたちの声がきこえる

高橋文樹

少し遅れたが、幼い頃の冬の夜についての記憶。メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!

タグ: #散文詩

591文字

夕ぐれの丘のあいだの道ではものかげに夜がひそむ

見なれた町なみの高いたてものや

かけぬけるちゅうりん場のちか道や

そうしたばしょでかげが夜のつめたいいきをはいている

 

さっきまで赤かった空の赤みが

いまではもうはじっこにしかない

つめたく白い星がこっちをにらみはじめている

 

冬がはだの上に氷のもうふをかぶせてくる

しんしんとさすように外がわからこごえていく

体のねつがとけて死んでいく

夜がなにもかもを飲みこもうとしている

 

丘のあいだをぬけると明かりがすこし見える

しろいかべが冬のやみにあたたかくうかんでいる

ほっと一いきをついてそのまえで少し立ちどまる

 

中から歌がきこえる

きえいりそうな高いおとで

それでいながら力づよく

かんしゃのうたを歌っている

 

しゅはきませり

しゅはきませり

 

おんなたちの声がやみ 空をみあげると

じゅうじかのライトがあかあかと

やみをあたためている

 

せくようなしんごうの点めつにせき立てられ

家じをいそぐ

まがりかどでじてんしゃのブレーキがなる

目をまるくしたおばさんはいう

ごめんなさいね

じてんしゃのかごには

おかしのつまった赤いながぐつがかたむいている

 

目のまえにじぶんのはいたいきが白くもやをかける

いきが少しずつふかくなる

もう少し

家のまえにはやみをきりさくようにライトがともっている

そのまえには大きな人かげがある

© 2019 高橋文樹 ( 2019年12月26日公開

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