今月は4誌が発売。

新潮 2016年9月号

  • 「みずち」(100枚)/新潮新人賞最年少受賞の高尾長良。「Would You Please Just Stop Making Sense ?」(100枚)/力強い創作を続ける舞城王太郎。2013年の148回芥川龍之介賞は、黒田夏子「abさんご」が受賞となったが、そのときの候補作には、高尾長良 「肉骨茶」(『新潮』 11月号)、舞城王太郎 「美味しいシャワーヘッド」(『新潮』 8月号)が名を連ねていた。力量のある新進気鋭作家高尾氏、安定した評価の中堅作家舞城氏。両氏の作家を同時に読める今号は賞レースの観点でも注目。
  • 連載は、古川日出男、島田雅彦、朝吹真理子など。松浦寿輝の連載「名誉と恍惚」は完結を迎える。
  • 『フリーターにとって「自由」とは何か』で衆目を集めた杉田俊介の「はじまりの宮崎駿――『風立ちぬ』再考」が掲載。ロスジェネ論壇のなかでも射程距離が長い論を展開する著者が「最後の国民作家」を論じる。

文學界 2016年9月号

  • 新芥川賞作家村田沙耶香の特集 受賞後特別エッセイ、中村文則との対談、そして吉村萬壱・鴻巣友季子の作家論が組まれている。
  • 特集は「大学で『文学』は学べるか」。蓮實重彦のインタビュー、千葉文夫×滝口悠生の師弟対談など。巷でささやかれる文学部不要論。その極論はさておき、文学部で文学を学ぶことの意義を考えてみたい。
  • 創作は椎名誠「飛翔蜥蜴」、小谷野敦「細雨」、東直子「民子の願い」、小山内恵美子「御堂の島」
  • 連載では伊藤比呂美の「切腹考」、槙田雄司「雌伏三十年」がそれぞれ最終回を迎える。

群像 2016年9月号

  • 「十七八より」で2015年、第58回群像新人文学賞を受賞した乗代雄介の受賞第一作「本物の読書家」(170枚)。浅生鴨が「伴走者」(中篇160枚)で盲人マラソンについて描く。
  • シンポジウムは沼野充義司会による「作家と翻訳家」。小川洋子×スティーブン・スナイダー、堀江敏幸×アンヌ・バヤール=坂井、松浦寿輝×辛島デイヴィッド。現代日本文学が海外へ輸出されていく事情について、最前線を概観することができる。
  • 連載は 橋本治、佐伯一麦、瀬戸内寂聴、磯﨑憲一郎、羽田圭介。連載評論では三浦雅士、佐々木敦、大澤真幸など。堅実で読み応えのあるラインナップである。
  • 11回を迎える保苅瑞穂「モンテーニュの書斎」も楽しみだ。

すばる 2016年9月号

  • 足立陽「ハイのゆくえ」、神慶太「裂け目、あるいは穴」
  • 連載は先回から始まった高橋源一郎「ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた」
  • 特集は「落語がこんなに面白いとは」は、長嶋有、原田ひ香、広小路尚祈、トミヤマユキコ、滝口悠生、杉江松恋、浜崎洋介
  • 文芸漫談シリーズは第4弾を迎える。メルヴィル『書記ハートルビー』を奥泉光といとうせいこうが語るのだが、不条理文学の先駆けとも言われるこの怪作をいかに読むか、そしていかに語るか。
  • 対談は瀬戸内寂聴×金原ひとみ「書くこと、生きること」、茂木健一郎×小森陽一「漱石と脳科学」。専門的な内容にとどまらず文脈が広く深くなっていきそうで、会話の行方が楽しみである。

以上、2016年8月発売の4誌について概観をお伝えした。