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台風で落ちてきた知らない鉄の棒

高橋文樹

大掃除についてのポエムです。

タグ: #自由詩

418文字

大きな台風が来て 日本は大変なことになった

ぼくが書斎にしているアパートも大変なことになってはいないかと

なかば胸を踊らせて見にいったら

玄関の前に鉄の棒が落ちているだけだった

アンテナだろうか 椅子だろうか

知らない鉄の棒だ

 

庭先に打ち捨てられたままの錆びた鉄の棒

それを捨てるには粗大ごみとして捨てねばならなかった

捨てるのは大変だ

それは何も生み出さない

捨てることで生まれるのは

それがもうなくなったあとの無だけだ

 

だいぶ時間がたって大掃除の季節

 

ぼくは捨てるべき諸々とともにその鉄の棒を車に積んだ

母が溜め込んだ使っていない布団

精神病院みたいな色をした白いキャビネット

劣化のせいでぱらぱらと葉を落とすクリスマスツリー

金太郎人形

強盗を倒すためにとっておいた木刀

どこにあったのかもわからない 知らない鉄の棒

 

市が指定するごみ収集センターでは

それらはすべて一律三百七十円だった

ぼくは五千円ほどのお金を払って無を手に入れた

© 2018 高橋文樹 ( 2018年12月18日公開

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