絶滅者 37

hongoumasato

小説

1,722文字

ついに「ワタシ」は清彦との戦いを前に、母と藤堂一族の因縁を知る。

それは醜く悲しい物語だった。

清彦の異常性。

藤堂一族の揺れ動く打算。

そして、母の「ワタシ」への無常の愛。

物語はクライマックへと加速していく……

なぜ母は爆弾なのか。

 

なぜ母は狂人と罵られるのか。

 

藤堂の女系は代々、なぜか奇人変人が多い。

 

母もその大多数の一人だった。

 

生まれてこの方、母の顔に表情が浮かんだことは皆無。

 

ずっと能面のような顔で生きていた。

 

その程度なら、藤堂の男どもも騒ぎはしない。

 

壊れた一族の女は、見飽きていたから。

 

だが、運命は母に表情を与えた。

 

酷い仕打ちで。

 

母は表情を覚えた。

 

とても哀しい理由で。

 

母が爆弾となったXデー。

 

母が狂人と罵られる「笑顔の仮面」を手に入れた日。

 

母はこの納屋でレイプされた。

 

レイプしたのは清彦。

 

それで「出来た」のがワタシ。

 

母はレイプのショックで全壊した。

 

けれど、ワタシの誕生で生まれ変わった。

 

ワタシに生をあたえた時、母は笑顔の仮面を被った。

 

それは醜い過去や現在を赦したからではない。

 

それから逃げるために。

 

笑顔でいることで、絶大な権力を誇る藤堂一族との摩擦を避けるために。

 

そして一族や冷酷な世間から、ワタシを守るために……。

 

一方、一族の人間にとって、このレイプはスキャンダルどころの騒ぎではない。

 

清彦の父は当時、財務大臣だった。

 

清彦のレイプが洩れれば、彼の父が失脚するのは自明。

 

加えて、そのゴシップは一族全体を揺るがす。

 

公共事業受注を思い通りに操作できなくなるから。

 

一族にとって、地元県警を操作することは朝飯前。

 

問題はハイエナ――マスコミども。

 

この手の醜聞を手ぐすね引いて待っている連中。

 

知られてはまずい。

 

では、どう手を打つ?

 

――当事者達が沈黙を貫けばいい。

 

清彦は藤堂一族を背負って立つ人材だと、誰もが認めていた。

 

ビジネスで清彦に敵う者など、藤堂一族にすらいなかった。

 

そして幼少時から、説明できない力を持っていた。

 

その力は人外。

 

一族の最高幹部達は、ついに世界をとれる藤堂直系の跡取りができたと狂喜乱舞。

 

それがこの醜聞で、清彦はエースの座を追われた。

 

だが、そのビジネスセンスは一族も捨てきれない。

 

何より、清彦の人外の力は、いつか一族を守るために利用できる。

 

そう踏んだ最高幹部達は、清彦を表舞台から隠すことに決めた。

 

ノンバンク系の金融会社を、清彦にあたえた。

 

その会社は世間から見れば大会社でも、藤堂から見れば零細企業。

 

 

 

問題は、母。

 

その人格は壊れている。

 

だから母自身が、真相を外に発進する心配はない。

 

だが、弁護士やフェミニスト団体などに嗅ぎつけられたら、厄介極まりなし。

 

一族は一つ、ミスを犯した。

 

それは、母の妊娠検査。

 

ロストヴァージンでも、妊娠する。

 

一族が気付いた時には、もう手遅れ。

 

堕胎可能時期は遥か昔。

 

母の殺害計画も検討された。

 

だが、一族の女系達が許さなかった。

 

「殺れば告発する」と、男どもを恫喝した。

 

誠意ある人間達。

 

男どもの方が、よほど壊れている。

 

何にせよ、母の件は解決せねば。

 

最終的な女系との妥協案。

 

それは母を結婚させること。

 

早急に結婚相手探しが行われた。

 

そして一族のお眼鏡に適ったのが、誠実・実直な父だった。

 

本人達の意向など、露も考慮されず。

 

不埒な者と結婚させると、母がストレスから過去の真相を喚き散らす恐れがある。

 

何より、母の醜聞をダシに一族を攻撃されたら厄介だ。

 

そんな打算の下で生まれたのが、ワタシ達家族だった。

2019年2月22日公開

© 2019 hongoumasato

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