絶滅者 46

hongoumasato

小説

1,179文字

日本最強の部隊・陸上自衛隊特殊作戦群すら、全滅させた「ワタシ」。

そして「わたし」と「ワタシ」は家族との、平穏で幸福な時間を取り戻した。

新たな、大いなる「否定」の始まりを予感させて・・・

エピローグ

 

 

今、家族と幸福な時を過ごしています。

 

けれど。

 

まだ破壊すべき人間達が、数多く残っています。

 

下世話を通り越して、暴力ですらあった「噂」の元凶、元山家の奥さん。

 

わたし達の夜逃げ先をヤクザに教えた、若い夜逃げ屋。

 

弟のイジメを黙殺した、教師と同級生。

 

そして未だ跳梁跋扈する、藤堂一族の者達全員。

 

半島と大陸には、わたし達の家を射程圏内におさめたミサイルを配備した国々。

 

日本人を憎むことがアイデンティティである彼達。

 

その彼達がミサイルを放つ前に、彼達を破壊する必要があるのでは?

 

日本人のわたしが破壊を行えば、戦になるでしょう。

 

家族以外の大勢の人間が……。

 

わたしにとってそれは、どうでもいいこと。

 

わたし達が困っている時、誰か救いの手を差し伸べてくれましたか?

 

家族の安全確保、そして永遠に静かなオアシスを守るため、破壊すべき人間は、まだまだ沢山います。

 

身近にも。

 

海の向こうにも。

 

 

人間は誕生してから今日まで、「生」を営々と続けてきました。

 

子を産み、育て、社会を形成して。

 

それは人間の偉大な歴史。

 

人類の壮大な伝説。

 

荘厳なる神話。

 

わたしはそれに、終止符を打つかもしれません。

 

 

わたしは望んで、人間を破壊しません。

 

けれど、わたしと家族の聖域を侵す者、その可能性のある者は破壊します。

 

人間を殺すことは、その人間を「否定」すること……。

 

わたしを人殺しと罵る人間は大勢いるでしょう。

 

でも。

 

他人を「否定」したことが無い人間なんて、いるのでしょうか?

 

誰もが、周囲の全ての人間を受け入れていますか?

 

お互いの価値観・立場の違いを埋める努力を、常に行ってきましたか?

 

自問してください。

 

 

わたしが、人間を見渡すと……

 

自分以外の人間を“否定”してばかり。

 

そんな人間達が、他人の命の重さを計れるでしょうか。

 

 

相手を傷つけない選択肢。

 

相手を否定しないで済む方法。

 

それは、自分の死。

 

または、自分以外の人間全員の死。

 

「死」は静かで尊いものですね。

 

 

ふと思うのです。

 

この世界の全ての者達を「否定」すれば、家族は愛の羽衣で永遠にくるまれるのではないかと。

 

 

命とヘリウムは、どちらが重いのでしょうか?

 

(完)

2019年2月24日公開

© 2019 hongoumasato

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