絶滅者 40

絶滅者 ー「わたし」と「ワタシ」ー(第40話)

hongoumasato

小説

1,718文字

清彦が明かす、複数の絶滅者存在の真相。
それは大規模な人類滅亡の抜かりない計画だった。
一方、「ワタシ」の体に起きた異変を清彦に指摘され・・・

「人間の心――それは無限の広がりを持つ闇なんだよ。同時に、それは全てが解放される世界でもあるわけ。しかし、そこに存在する闇の迷宮は複雑怪奇なんだね。全ての人間達は、異なる価値観と思想を持つから。ゆえにその最大公約数が常識となるよね。そしてその常識からの乖離が大きい程、狂気の度合いも強いと社会から糾弾されるんだ」

 

相変わらず冷笑を浮かべたまま、清彦がワタシに語り続ける。

 

「さっき君は、私を狂っていると言ったよね? 大多数の人間から見れば、そうかもしれない。では、君自身はどうだろう? 本当に私を狂っていると思うか?」

 

「ええ、狂ってるわ! ワタシもアンタも狂ってる!」

 

怒鳴ったワタシを嬉しそうに見詰める清彦。

 

全身に鳥肌が立つ。

 

「そうか……そうだね。お互い、もうマトモな人生なんて歩めないもの。そもそも私達はすでに、人間ですらないけどね……誕生以来、半分は絶滅者として存在していた。君、初潮が来なかったろ?」

 

唐突で不愉快で――正しい発言。

 

早朝の洗濯場で、下着を洗っていたワタシ。

 

母の期待に満ちた顔。

 

異形のモノとの遭遇で失禁しただけなのに。

 

ワタシに生理は来なかった。

 

それが意味することは明白。

 

人類を絶滅させる者が、新たな人類を生み出す必要は無い。

 

しかし、もう一つ。

 

「アンタに指摘される前に言っておくわ。異形のモノと融合した時、ワタシには、その……股間にできたのよ。男性器が……」

 

清彦の目が笑う。同じ変化が現れたに違いない。

 

彼の場合は女性器だけど。

 

ワタシ達――絶滅者は、両性具有になるらしい。

 

それは、万能の支配者としてのシンボル。

 

「私も君も、もう人間じゃないんだよ。この星に居場所は無い」

 

「ワタシはある。そのために破壊を行ってきた。アンタはどうして、人間を破壊するの?」

 

「人間が嫌いだから。全ての人間達に、生きていてほしくないから」

 

あっさりと返答する清彦。

 

当然だろう、という響きがある。

 

「さっき、星の管理者達が保険をかけたと言ったね? 絶滅者も、タイプ分けされたんだ。人類を一人で皆殺しにするタイプ――私のような絶滅者。周囲を巻き込んで、最終的に人類を絶滅させるタイプ――君のような絶滅者」

 

「周囲を巻き込む? どういう意味?」

 

「たまには、施政者達も透視した方がいい。銀行幹部殺しが発端となって、君が未知の存在であることは、広く国民のコンセンサスになった。そして国民は、恐怖を感じている。強行派の現政権とアメリカにとって、君は渡りに船だ。君という化け物に、警察では歯が立たないことを国民にアピールする。そして、自衛隊の登場という算段だ。君は、自衛隊に初めて攻撃させる口実だ。こうして治安出動・実戦の既成事実を積み上げて憲法を改正し、日本は正式に軍隊を持つんだよ」

 

「どうしてそれが、人類を絶滅させるの? 自衛隊が軍隊になった途端、戦争を始めると思う?」

「実弾は飛び交わない。だがアジア諸国は、極度の緊張状態に陥る。彼達の中で、日本はまだ侵略国家だからね。このアジアの軍事バランスを崩すのも、君だよ」

 

「どういうこと? ワタシは……」

 

「星の管理者は君に、様々な世界の歴史と真相を見せたよね? そして君の中で、もう結論は出てるはず。生きる価値が無いどころか、破壊すべき連中が沢山いると」

 

これが、行き着く先だったのか。

 

時折ふと頭に浮かんだ、歴史と現状に基づいた人間の本質。

 

知識と教養は、このために与えられた……。

 

加えて、清彦は図星をついた。

 

家族の救出は最優先だ。

 

でも、どうしても生存を許せないゴミ――人間が大勢いる。

 

それら人間の野放しは回りまわって、ワタシの家族の安全を脅かすのではないか。

 

そう考えるようになっていた。

2019年2月23日公開

作品集『絶滅者 ー「わたし」と「ワタシ」ー』第40話 (全46話)

© 2019 hongoumasato

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