マナブくんのマブイ

フィフティ・イージー・ピーセス(第9話)

Fujiki

小説

2,094文字

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』収録作。

マナブくんは先週から学校に来ていない。一応病欠届が出されていたが、噂によれば彼はマブイを失くしたらしかった。「マブイ」とはこの地方で「たましい」を意味する言葉である。しかし、不注意な人がときどきやってしまうように何かの拍子にうっかりマブイを落としたわけではないようだった。悪魔に売り渡したらしいというのが私たちのあいだではもっとも有力な説である。マナブくんが悪魔と一緒にスターバックスにいるところを何人かが目撃している。マナブくんのくせにスカしてスターバックスなんかにいたから人目を引いたのだ。

ようやく登校してきたとき、私たちは彼がマブイを失っていることをすぐに理解した。一見すると今までどおりのマナブくんだったが、同時に彼はもはや私たちの一人ではなくなっていた。いつものおびえた表情が消え、背筋が伸び、近寄りがたい孤高の雰囲気を漂わせている。目立たなかった彼が突如として煌々と光を放ちはじめたかのようだった。その変化は私たちを戸惑わせた。

マナブくんは始業のベルが鳴ったあとに悠々と教室に入ってきた。彼は私たちと同様にこれまで一度も遅刻をしたことがなかった。私たちの担任の先生は戸を荒々しく開ける音に出席の点呼をさえぎられ、一瞬何が起こったのか理解できていないようだった。

2018年4月28日公開

作品集『フィフティ・イージー・ピーセス』第9話 (全50話)

フィフティ・イージー・ピーセス

フィフティ・イージー・ピーセスの全文は電子書籍でご覧頂けます。 続きはAmazonでご利用ください。

Amazonへ行く
© 2018 Fujiki

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

学園モノ

"マナブくんのマブイ"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る