児童文学でも活躍した詩人で作家の三木卓が11月18日に、老衰のため死去した。88歳だった。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会を後日開く。

 三木は1935年、東京生まれ。幼少期を旧満州で過ごし、11歳で静岡市に引き揚げた。1959年、早稲田大ロシア文学科卒。河出書房新社などに勤務後、専業作家に。67年に詩集「東京午前三時」でH氏賞、71年に詩集「わがキディ・ランド」で高見順賞、73年に旧満州での敗戦前後の体験を基にした小説「ひわ」で芥川賞を受賞した。

 1997年に小説『路地』で谷崎潤一郎賞、2000年に小説『裸足と貝殻』で読売文学賞、2006年に『北原白秋』で毎日芸術賞、藤村記念歴程賞、蓮如賞をそれぞれ受賞する。2012年に『K』で伊藤整文学賞を受賞。

 英米、ロシアの児童文学の翻訳は数多く、特にアーノルド・ローベルのシリーズはロングセラーとなっている。また、破傷風にかかった娘を描写した1975年の中編『震える舌』は後に野村芳太郎によって映画化された。

 筆者も、三木が翻訳したアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』(文化出版局)は今でも覚えている。あらゆる賞を受賞していることでも明らかではあるが、それでも計り知れないほど大きく、幅広い文芸への貢献を果たしてきた偉大な文人だったと言っても過言ではないだろう。ご冥福を祈りたい。