滋賀県彦根市が主催する「第17回舟橋聖一文学賞」と「第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞」がそれぞれ決定し、「舟橋聖一文学賞」を町田康『口訳 古事記』(講談社)、「第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞」を吉田詩織『バニラ、ストロベリー、それからチョコレート』が受賞した。

 「舟橋聖一顕彰青年文学賞」は、舟橋の執筆した井伊直弼公を題材にした小説『花の生涯』などで彦根市の名を全国に知らしめた多大なる功績をたたえ、舟橋を彦根市名誉市民第1号にするとともに、広く青少年の文学奨励をはじめ、教育・文学の振興を図るため、同氏を顕彰する文学賞として、1988年に設けられた。応募資格は満13歳以上満30歳以下。
 「舟橋聖一文学賞」は、文学の振興を通じて、彦根市民の豊かな心を育み、香り高い文化を築くため、舟橋聖一の文学の世界に通じる優れた文芸作品に贈られる。2007年に彦根城築城400年を記念して創設された。昨年は、玉岡かおる『帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門』(新潮社)が受賞した。

 『口訳 古事記』は、日本最古の神話「古事記」を、関西弁をまじえた今の話し言葉で現代語訳したもの。『バニラ、ストロベリー、それからチョコレート』は、両親の離婚をきっかけにミッションスクールの提携校間を転校した高校一年生の明里と、長沢という少年じみた女子との交流とそれぞれが抱える葛藤を描く。

 選考委員は佐藤洋二郎、藤沢周、増田みず子、富岡幸一郎の四人。10月29日に、東京で開催した選考委員会による選考が行われた。

 町田康は、1962年大阪府生まれ。1997年『くっすん大黒』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞、2000年「きれぎれ」で芥川賞、2001年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、2002年「権限の踊り子」で川端康成文学賞、2005年『告白』で谷崎潤一郎賞、2008年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞している。

 吉田詩織は、1994年生まれの宮城県出身。宮城学院女子大学学芸学部日本文学科卒業。2019年6月分、2022年7月分「山新文学賞」佳作、「第202回集英社Cobalt短編小説新人賞」受賞、「2019年度集英社Cobalt短編小説新人賞最優秀賞」受賞。

 なお、授賞式は、12月19日に彦根市役所本庁舎特別応接室で開催される。