朝日新聞出版は10月5日、科学雑誌「Newton」を発行する出版社「ニュートンプレス」の全株式を同日付で取得したと発表した。

 Newtonは1981年創刊の月刊誌。写真やイラストを駆使して科学を伝えるビジュアル科学雑誌。部数は8万5000部で、科学雑誌では国内最大。

 ニュートンプレスは、前社長が定期購読者から出資金を不正に預かったとして、2017年2月に出資法違反の容疑で逮捕され、有罪判決が確定した。同月、民事再生法の適用を申請し、東京地裁に認可された。再生手続きは20年に終結し、現在は再生計画に基づいて債務の返済を続けている状況。

 今後は、朝日新聞グループが債務の返済を保証。朝日新聞出版が営業や販売をサポートし、雑誌書籍の売り上げ増や新規事業の検討を進める。Newtonの編集方針も従来のまま維持するとのこと。

 朝日新聞が発行していた科学雑誌『科学朝日』(1941年創刊、1996年に名称をSCIaSに変更)は2000年に休刊しているが、これからの動きにも注目したい。

 ニュートンプレスの高森社長は「この協力関係は両社にとって大きな機会となります。出版業界における存在感を強化するため、今後の発展に向けて共に努力してまいります」とコメント。

 朝日新聞出版の市村友一社長は「経営面では、朝日新聞出版が持つ営業ネットワークを活用し、ニュートンプレスと全国の読者や企業、そして書店や販売業者の方々とのコミュニケーションをサポートしていくほか、新たな書籍やイベントを共同で企画してまいります」と今後について述べている。

 科学雑誌といえば、イギリスのNatureと共に「Newton」と答える人も多いのではないだろうか。長らく斜陽産業と言われ続ける出版業界で独自のジャンルで市場を持っているのは一つの強みだろう。朝日新聞グループがこれからどのようにその存在感を大きくしていくか。