佐川恭一は、『シン・サークルクラッシャー麻紀』を日本SF大賞にエントリーした。

本人がTwitterで伝えた。

数多くの読者から好評を博し、先日には三刷を迎えた『シン・サークルクラッシャー麻紀』だが、様々な番組でも取り上げられるなど、メジャー方面にも大きな一歩を踏み出している。そして、佐川恭一は自らさらに大きな一歩を踏み出した。『シン・サークルクラッシャー麻紀』を、第43回日本SF大賞にエントリーしたのである。だが、これが初めてではない。第42回では『ダムヤーク』を、自らエントリーしている。果敢な挑戦は幾度も行い続ける、その精神が素晴らしい。

それにしても、『シン・サークルクラッシャー麻紀』とSFにはどのような関連が見出せるのだろうか?佐川恭一はエントリーの際、この様なコメントを掲載した。

「サークルクラッシュ」というのは、女性比率が低い集団の中で複数の男性が特定の女性に強い好意を抱くことにより人間関係が崩壊してしまうという、突き詰めれば脳科学的現象の一つである。京都大学にはこれを長年研究している院生も存在し、今後の悲劇を防ぐためにも体系的な学術書の早期刊行が待たれるところだが、本作はフィクションの側からこの現象の本質に迫ろうとした意欲作である。
言うまでもなく、フィクションは現実を戯画化し、また拡張することによって現実の諸問題を浮き彫りにし、見る者をそれ以前にはたどり着けなかった場へと導く想像力の翼を与える。本作に現れる脳科学的現象とそれに抗う/抗えない意志としての個体が織りなす物語は、人間存在の限界と可能性を過去に類例のない主題から問う新時代のSFと言えよう。なお、自薦である。

なるほど、SFである。佐川恭一は、SF作家としても大きな一歩を踏み出している。創元SF短編賞優秀賞を受賞した斧田小夜のように、更なる飛躍を遂げる日も近いだろう。佐川恭一の挑戦がどのように繰り広げられていくのか、はめにゅーでも今後も追っていきたい。