2017年11月21日、スウェーデン最大の新聞ダーゲンス・ニュヘテル紙が、スウェーデン・アカデミー周辺でのレイプ・セクハラ疑惑を報じた。現役作家やジャーナリストを含む18人の女性が告発したもので、期間は20年以上におよぶという。疑惑の人物はアカデミーの会員ではないものの、一部会員に対して強い影響力をもつ文化界の大物であり、いくつかの被害はアカデミー所有の施設や主催パーティーで起きたとされる。

スウェーデン・アカデミーは、1786年に設立された国立の学士院だ。本来の活動目的はスウェーデン語の言語的信頼性を維持し担保することだが、文学ファンにとってはノーベル文学賞の選考委員会を兼ねているという事実のほうが馴染み深いのではないだろうか。会員の定員は設立当初から常にわずか18人のみであり、おまけに終身資格となるので、ここに巨大な利権構造が発生することは想像に難くない。

10月に発覚したハーヴェイ・ワインスタインのスキャンダル以降、ショウビズ界やスポーツ界では性被害の告発が相継いでいる。それらは、いずれもプロデューサーやコーチのような強い立場にある相手からの被害だという共通点があった。今回のスウェーデン・アカデミーの件も同様の構図が見てとれ、パワハラや脅迫の要素をあわせもっている点がより悪質さを際立たせている。疑惑が事実であれば、当該人物は糾弾されて然るべきだろう。

被疑者の氏名は現時点で公表されていないが、報道によれば長年スウェーデンの文化界を牽引してきた人物であり、国王から勲章も授かっている男性だという。ストックホルム市やアカデミーからは文化事業のための補助金も出されており、一部では「19人目のアカデミー会員」とも呼ばれていた。

この報道を受けたアカデミーは早速調査を開始し補助金を停止したという。今年のノーベル賞関連イベントへの出席もすべて取り消しとなった。迅速な対応といえないこともないが、しかしサラ・デニウス事務局長が出した「悪い噂があるのは知っていたが、これほどまでとは」というコメントからは、闇の深さしか感じない。