子供と昼寝をしていたら、夢に子供が出てきた。川の前に立っていた。美しい川だった。河原で沢蟹が歩いていた。子供は沢蟹を見るのが初めてだと言って、喜んでいた。
その日は朝から雨が降っていた。子供が風邪をひいてしまったのだ。私は子供を抱えて医者へ行った。子供をベッドに横たえると、私は子供のために粥を作った。鍋一杯に作った粥を持って、子供のところへ戻った。
子供は泣いていた。私が粥を差し出すと、子供はそれを床に落とした。床の上に粥がぶちまけられた。粥の中には沢蟹が入っていた。沢蟹は粥の中に溺れていた。子供はその光景を見て、泣き出したのだった。
私は子供を抱いたまま、部屋を出た。すると廊下の向こうから、一人の女が現れた。女は私に向かって手招きをした。私は子供を抱いて、女のほうへと歩み寄った。女は私達二人を見ると、微笑んだ。そして言った。
あなた達は幸せね。だって、もうすぐ死ぬんですもの。
そこで目が覚めた。
……というようなことを、先ほどからずっと考えているのだが、どうにもわからないことがある。それはつまり、どうして私は今こんなことを考えているのかということなのだけれど……。
……ああそうか。わかったぞ。これはきっと夢の続きに違いない。あの時私は、女の言葉を聞いているうちに、眠ってしまったのだ。だからこの場面も夢の中で見ているわけである。なるほど納得した。ではさっさと目を覚ましてしまおう。
目覚めると、目の前に女がいた。女は私の顔を覗き込むようにして見ていた。
お目覚めですか? と女が訊いた。
ええ、と私は答えた。ここはどこでしょう?
病院ですよ、と女は答えた。
私は自分が何故ここにいるのか思い出そうとした。確か昨夜は会社の飲み会があって、それから一人で家に帰ったはずだ。それで寝る前に一服しようと思って煙草を取り出したところまでは覚えている。しかしそこから先がどうしても思い出せない。
ところであなたは誰なんですか? と私は尋ねた。
女は、私の妻だと言った。
私は驚いた。そんな馬鹿な、と思った。
妻だという証拠を見せてくださいと言うと、妻は少し困ったような表情を浮かべてから、ちょっと待ってくださいと言い残して病室から出ていった。
しばらくして戻ってきた妻の手に握られていたのは、結婚指輪だった。私はそれをじっと見つめた。記憶にはないけれど、確かに見憶えのあるものだった。
それじゃあ、本当にあなたは僕の奥さんなんですね? と私は確認するように訊いてみた。
はい、そうなんですよ。信じてもらえましたか?
信じられません、とは言わなかった。信じるしかなかったからだ。
しかし何故だろう、妻を見ていてもまるで現実感がない。やはりこれは夢の中の出来事なのではないだろうか。……でも、そういえば私は一体何の夢を見ていたんだったろうか。思い出せない。
何かあったんですか? と妻が尋ねてきた。
いえ別に何もないですよと答えて、私は誤魔化した。
すると今度は妻のほうが質問してきた。
ねぇ、一つだけ教えてくれますか? どうしてあんなところに倒れていたんですか?
……それは、僕にもわかりません。気がついたら、あそこにいたんです。
そう答えると、妻は不思議そうに首を傾げた。
おかしいわね。そんなはずはないんだけど。
そう言われても、私には心当たりがなかった。
やっぱり、初対面だと思うんですが、と正直に打ち明けると、妻はひどく悲しそうな顔になった。
……やっぱり、憶えてないんですね。
ええ、残念ながら。
すると妻は寂しげな笑みを浮かべたまま、私に向かってこう言った。
……あなたが私のことを忘れてしまったのは、仕方がないことかもしれない。
だって、あなたにとって一番大切な人はもういないんですもの。
その言葉を聞いた途端、頭が痛くなった。割れるような痛みを感じた。思わず頭を押さえようとした手が、空を切った。
……そうだ、腕がないんだった。私はそう思った。
自分の身体を見下ろしてみると、そこにはぽっかりとした空洞があるだけだった。あるはずのものはどこにもなかった。そこでようやく、私は死んだのだということを思い出した。
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