頭上の道路

麦倉尚

エセー

1,619文字

エッセーです。短めなので、短時間で読むことができます。

書こうと思って志賀直哉を読んだ。短くて読みやすく、小さいオチがついて分かりやすい。こういうものを書きたい。短い、理解しやすいだと誰にでも受け入れてもらいやすいとだろうし、だらだら退屈な内容を書き綴るよりも、読み終わって有意義だったと読者に感じて頂けるだろう。最近は幼少期の思い出から、何かを関連付けて、でっち上げられないかと創意するが、何も思い浮かばない。

 こういうときは出歩くべきだ。じっと机の前に座っててもアイデアは浮かばないと、フェルミ研究所で学んだので俺は外へ出る。電車に乗り○○駅で降りてみる。そして視線を上に向けて歩くと、タピオカ屋の看板が視界に入る。キリンが描かれておりその上にtapiokaと記してある。来年ここに、このキリンはいないだろう。次は何を見ればいいのか、視界はそのまま道を進む。

 高い商業ビルからクレーンが伸びている。近くに寄ると俺は顎まで上に向け、建設中のビルを眺める。長らく工事やってんな。ビルが完成する頃にはコロナが収まっていてほしい。その方が俺を含めたみんな、目新しい建物に足を運びやすい。

 こうして歩いて街を見物していると、仕事のことが思い浮かんでしまう。大抵人間関係のしがらみについてだ。誰にでもある悩みだろう。歩いてどこへ向かえばいいのだろう。このまま進むと北南を断裂するように流れる川に出るのでそこまで歩こうか。

 足が疲れ始めた頃、目的にした川に辿り着く。道路がその上に架かっている。当たり前のように頭上にあるが、どうやってあの道は架けられたのだろう。顔を上に向けて考えていると足の疲れを忘れてしまう。

 川に沿っている散歩道を歩いていると、下劣な落書きを足元のマンホール蓋に見つけてしまい、写真に収めた。中傷されている保母の○○さんは本当に性に奔放なのだろうか、気にはなってしまう。

 俺は誹謗されていた保母の姿を想像しながら散歩道を歩いた。バス停がある。どうやら○○駅まで向かうバスが三分後に来るらしい。今日、創作のネタになるものは得られたかわからないが、脚が疲れていてふとももに痛みがある。バス停の前に留まり今日の行動を辿っていると、5分遅れのバス来る。

 車内に乗り込むと中にいるのは子連れの女性と老人幾人かだった。俺は前方に座った。遅れたことを詫びるアナウンスと共にバスが進み始めた。おそらく俺以外の誰もがアナウンスに耳を傾けていなかった。

 バスが○○駅に到着しそこから電車に乗った。午前に乗り込んだ車両と雰囲気が違うのは、日光の入る方向が違うからだろう。眠くなり目を閉じるとうとうとしてしまい、気が付くと最寄り駅を通り過ぎていた。

 止まった駅のプラットホームに降りた。駅周りは自然が豊かだ。こういう清々しい緑みたいな小説を書きたいものだ。戻る電車に乗ると、車両の乗客が俺と小さい男の子だけだった。

 その子は背中を座席に付けてスマホを触っている。マスクをしていなく足を組んでいる。一人でどこへ向かうのだろうと勝手に心配していると電車が目的の駅に着く。

 電車を出た。降りた階段に続く地下の通路は陽を浴びている地上より気温が低く、眠い頭を冷ましたくれた。ただ脚には疲労が溜まっていた。座りたい。眠りたい。何か食べたい。

 改札を出て王将に入り昼のセットを食べたか、満腹感がない。かなりの量を胃に入れたのに腹が膨れない。何故か。わからない。ラーメンやチャーハンはどこへ行ったのか。会計を済ませて店の外へ出た。電子決済をする機器に「必らずマスクをしてくださいね」と掲示があった。かならずの送り仮名が間違っていたような気がした。トレンドでは「必ず」ではなく「必らず」でもいいのだろうか。道を歩きながら俺は考えたが、どちらでも意味が伝わるので、どっちでもいいかと結論付けた。

 2月の昼はこんな風に暖かだったか。ただ腹が減ってる。ラーメンとチャーハンどこへ来たのか。俺の昼食はどこへ消えた。どこ消えたのか。俺は空いた腹と家に帰った。

2021年2月16日公開

© 2021 麦倉尚

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