ランチに何を食べたか、よく覚えていない。
脱稿後はいつもだいたいこうだ。ノベルジャムだからって例外ではない。
でも、たぶん、きっと、まい泉のトンカツ弁当だったと思う。
午後は協力会社のBCCKSエンターテインメントエンタープライズの美人社長である山本さんがいらっしゃって、懇切丁寧にBCCKSの取り扱いをレクチャーしていただけるというので、正座して待っていたが、現れたのはカウボーイだった。うろ覚えの会社名が長いが、まあ正確なところは各自検索して確認していただきたい。たぶんBCCKS株式会社とかだった気がする。
BCCKSってどう読むんだ、という初心者のトーシローにあえて説明しておくと、それは「ブックス」でいい。なんとなくそんな風に読む気はしてただろ。あんたの直感は大したものだ。これからもアテにするといい。BOOKSのOを「オープンな感じの」Cに置き換えて、開かれた出版を目指すという心意気の表れであるとようなことを誰かから聞いたか、あるいはウェブサイトで読んだかで、知っている。読むときは「ビーシーシーケーエス、ブックス」と読むのが正式だ。これは試験に出すので覚えておけ。
BCCKSは今は亡き月刊群雛(ぐんすう:日本独立作家同盟の文芸誌)の制作・配本システムとしても使わせていただいていたもので、月刊群雛が事実上の廃刊になったあとは、オルタニア、および、ガンズ&ユニバースという電子雑誌の制作・配本システムとして使わせていただいている、ウェブツール兼配本システムだ。複数の参加者で印税分配ができるという他にない機能が特長だが、中の人はたぶんすげえ大変だと思うので、いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
というわけで、ノベルジャムでもBCCKSのシステムで電子書籍を製作し、そのまま発売してしまうということになっていた。発売には審査とか何もいらないので、発刊ボタンをクリックしたら問答無用でBCCKSのストアで公開される。あなおそろしや。
話を戻そう。会場にさっそうと現れたカウボーイは、誰あろう伝説のスーパー武闘派デザイナー松本弦人氏その人であるのである。
「弦人さんがさー」って話したら「誰?」とか言われることが稀にあるのだが、お前らバカ。バカお前ら。知らないのは罪ではないが、知らないなら黙ってこっそりググれ。そして知っている顔をしろ。知っているのが当たり前の人だぞ。何言っちゃってるかなー。
少し時間を巻き戻そう。
あれはまだインターネットという言葉が、地方の農村までは知れ渡ってないようなそんな旧世紀の話だったわけだが、「マルチメディア」とかって言葉がまだ産声を上げて、生後数ヶ月みたいな時代に、ババーンと一斉を風靡したCD−ROM作品があったわけだよ。その頃はまだインターネットはギガどころかメガじゃねえから、カラフルな動くものはCD−ROMで売られていたわけだ。そんな旧石器時代に未来人から贈り物が届いた。それが「ポップアップコンピュータ」だ。思い出しただろ? サルブルネイの。そう。それだ。まだ思い出せないって? 君はどこかほかの平行世界からパラレルシフトしてきたに違いないね。あるいはその頃は長期入院でもしていたはずだ。少なくとも1995年ごろにパソコン雑誌やMac専門誌を定期購入していたなら、間違いなく記憶のどこかにクサビが打ち込まれているはずだ。
※「Pop-up Computer」はFDでリリースされたもので、CD-ROMの方は「ジャングルパーク」だったようだが、記憶なんて曖昧。
巻き戻し終わり。
そのサルブルネイの松本弦人さんが、指導員として現れたわけだ。ぜいたくすぎるわ。なんなのこのプレミアムな午後。
周りを見ると、どうもピンと来てるやつが少ない。ヘイヘイおまえらサインもらうなら俺の後ろに並べよな。まったく。
まあ確かに、その偉業を知らない蒙昧メンにとっては、無免許運転で服役したコワモテの***にしか見えないのだから無理もない。彼らにはその後光が見えないのだ。哀れ。今、君たちは人生でかけがえのない時間を過ごしてるのですよ。この瞬間こそが人生のピークかもしれないのですよ。主よ、彼らに救いを与えたまえ。あ、俺はいいです自分でできます。
ぼくはBCCKSに慣れているので、サクッと終わらせて待機モードに入った。チェックしてもらっても数分で終わるので、後回しにしてくださいと申し出た。だって10チームもあるんだから、時間がなくなってしまうじゃないか。俺ってフェアだわー。もっともこの工程は審査に関係ないからフェアになれたんだけどね。発刊まで含めて審査するのだとしたら、俺は松本弦人を独り占めして、他のチームが完成までたどりつけないように画策したことだろう。それがバトルだ。普段からBCCKSを使ってないほうが悪い。準備不足を人のせいにするんじゃない。ひひひひ。とかなっていたら、たぶん運営から叱られたと思うので、そんなことにならなくてよかった。弦人さん、山本社長直々の指導のおかげで、各チームどうにか時間までに発刊を終えることができた。俺の妙にテンションが高い時間帯も終わった。
ストアにずらりと並ぶノベルジャムの作品たち。素晴らしい表紙ばかりだ。嗚呼素敵。
そして新刊コーナーの一番上には、我々Hチームの「PAUSA」と「スパアン」が並んでいた。
全部で17点なので、下の方はすでに次ページに送られていた。わしらのは一番上。しばらく新しいのは出てこないので、当面一番上。
ストアの新刊コーナーでは、新しいものが上に来る。
一番最後に松本弦人さんにチェックしてもらって発刊した我々の作品は、当然一番新しい。殿だからだ。
YES! 計画通り!
さて、夕方のプレゼンタイムを控えて、ギャラリーも徐々に増えてきた。準備は万端。いつでもどうぞ。
つづく
"審査員が地獄を見ている合間に、ぼくらは本を紡ぐ"へのコメント 0件