超短編小説「猫角家の人々」その46

moonkaguya

小説

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超短編小説「猫角家の人々」その46
「朝鮮悪」組織が、カモを狩る狩場には、要所要所に拠点が設けられ、カモが確実に捕獲できるよう配慮されている。というか、自然に捕獲拠点のネットワークが出来上がっていったというべきであろうか。

癌の免疫療法の自由診療を謳うクリニックには、金持ちしか来ない。免疫療法に最後の望みを託してやってきた全身転移の進んだ癌患者は、この治療には保険が適用されないことを告げられ、受付で追い返される。まずは、自由診療の高額費用を負担できるだけの資産家の患者を選別するのだ。「カモ」候補として、資産家だけをピックアップし、資産状況を四つの葉弁護士法人がすぐさま調査する。

「自由診療」で客を呼び込むには「新療法で末期がんが治った!」といった話を癌患者の間に広めるのが得策だ。例えば、「有名人が、あの病院でがんが治った!」といった話を流布すれば、藁にもすがりたいカモ資産家がやってくる。背中に葱を背負って。

美容整形も金持ち選別に使える手段だ。腹の脂肪吸引に120万円も出せる余裕のあるオバサンは、恐らく資産家の部類であろう。あまり品は良くないかもしれないが。

朝鮮悪の「医療部門」は、こうして、カモの市中からの拾い上げの役割を果たすのだ。勿論、それだけではない。あとの段階で、致死薬物の調達、偽の死亡診断書の作成など、活躍の場はいくらでもあるのだ。診療報酬の不正請求等で保険医を取り消された医師には、裏社会の歯車として生きていくしか道はないのだ。

モミモミン治療室の店長、霊図美杏も、足揉みを求めてやってくる客の中から、金になりそうなカモを見つけ出す役割を帯びている。患者を迎えに行くと称して、家に上がり込み、資産状況を目視するのも霊図の大事な仕事だ。家の中を見れば、どのくらいの金持ちかは、大体わかるのだ。そして、カモの肉親を裏社会に引っ張りこむ。シャブすら使って。

弁護士は、カモのインターセプトの重要拠点だ。とにかく、脛に傷持つ人物が、次々とやってくる。金に困った無職のパチンカーの負債の整理。覚醒剤で捕まったジャンキーの減刑や執行猶予取り付け。偽装交通事故での後遺症詐欺、車両損壊詐欺を働きたいチンピラ。資産家の財産相続のトラブル介入。裏社会は、宝の山である。資産家を捕まえられるし、弁護士なら資産の中身を覗くこともできる。良質のカモは弁護士なしには捕獲できないのだ。

ドチンピラを捕まえて、親に生命保険を掛けさせ、2年経ったら、早速、亡くなっていただいて、4千万円を生保から手に入れる。チンピラは覚醒剤で縛っておいて、保険金のほとんどを取り上げる。弁護士はワルとなると心を決めれば、いくらでも、儲けられる分野なのだ。シンピラは金持ちである必要はない。ドチンピラで構わない。チンピラ度が高いほど、親の命を金に換えることに抵抗感を持たないのだ。

横浜の介護施設の現場にいる介護スタッフもまた、カモ探しの最前線にいる戦闘員である。日々、おじいちゃん、おばあちゃんの世話をするうちに、どの婆ちゃんが金を持っているか、家族構成はどうなのかわかってくる。そして、老人や家族の信頼を得て、家族の問題にも介入し、カモを「養成」していくのだ。過酷な労働。安い賃金。ぼさぼさ頭を気にする余裕もない。シャブでも打たないと続けられない。だが、裏社会に与すれば、最底辺の3K職場も、金が埋まっている金鉱脈となるのだ。

福岡の介護施設のオーナーも、カモ探しのプロである。介護施設を探して問い合わせしてくる親族を捕まえて、仲間に引き込む。老人を「処分」して金に換えることが本業であるゆえ、容赦はしない。どんどん処置する。成年後見人の制度を悪用して身包みはがす。婆さんは、邪魔だから「処分」する。残った家財が、偽介護老人施設、ネコネコハウスの一室に山と積まれるのである。

こういったネットワークに、朝鮮悪組織が覚せい剤密売事業を通じてリクルートしたシャブ中軍団が加わる。シャブ中連中は、往々にして何ら特技もない、無教養、無学、無資格の輩だが、それでいて、結構、いろいろと使い道がある。それに、シャブ中ゆえに、薬欲しさに、裏金欲しさに何でも言うことを聞くのだ。しかも、シャブ中の弱みを握られているので裏切る可能性も少ないのだ。(続く)

2023年8月7日公開

© 2023 moonkaguya

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