私は甲信地方にある小さな寒村で生まれた。そこでは起源の確かでない祭祀が、少なくとも私が村を出るまでは続いており、その内容を村の外に漏らすのは禁忌とされていた。成人後、働き口を求め村の外に出るものも多くいたが、祭祀の内容について外で話すものはいなかった。いないと思っていた。『モロゾフ入門』が刊行されると聞くまでは。
モロゾフ入門(第10話)
第28回文学フリマ原稿募集応募作品
4,268文字
『モロゾフ入門』の刊行を知らせにきた男から「改めてエメーリャエンコ・モロゾフとは何者か教えてほしい」と言われた。朧気な意識に覆いかぶさる遮光カーテンを一枚一枚捲りながら記憶の海に潜っていく。ああそうだ、三白がはらはらと舞う日、私はエメーリャエンコ・モロゾフになったのだ。
私は甲信地方にある小さな寒村で生まれた。そこでは起源の確かでない祭祀が、少なくとも私が村を出るまでは続いており、その内容を村の外に漏らすのは禁忌とされていた。成人後、働き口を求め村の外に出るものも多くいたが、祭祀の内容について外で話すものはいなかった。いないと思っていた。『モロゾフ入門』が刊行されると聞くまでは。
2019年5月6日公開 2019-05-06T03:49:38+09:00 2019-06-02T00:55:07+09:00
作品集『モロゾフ入門』第10話 (全13話)
これは第28回文学フリマ原稿募集の応募作品です。
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"エメーリャエンコ・モロゾフになった日"へのコメント 0件