会議

みやりまや

小説

2,350文字

好きな人のことを考える人のはなし

赤坂。雨上がり。昼下がり。晴れてきました。

午後14時、会議が始まる。ライター持ったっけな。

ぶりっ子なのに本当はツッコミ大好き。タケコ。

性欲のアンダーコントロール。ユミコ。

サブカルクソ野郎、且つ処女シノブ。

メイク成功率61.4%、普通の社員、私。

他の人はこの場にはおりません。

以上、4名でお送りする略称BL会(Before Love Meeting)

その男に惚れても問題ないか検討、議論をする会である。

本日の議題内容は「先週入社した総務の彼」

「どう思う。彼」

「最高だよ」

「早いよ、yumiko」

「シノブ、議事録では名前を英字にしないで。」

ああ、ややこしい。ちなみに最初と最後がタケコ。

「yumikoはまず体の相性がとか東口の占い師みたいな事言うの今日はやめてよ」

「シノブも寝静まるまでのエレクトロニカをYoutubeで再生するのはやめて」

「OKグーグル」

「タケコだよ!」

「最高だよ」

「なにがだよ!」

「アレクサ、週末の山中湖の天気は?」

「快晴デス!」

「シノブ、今週末の元カレと行くデートの天気を気にするのはやめて」

「キメの問題だよ」

タケコの業務はツッコミ以外何があるんだろう、と私が考えている中、ユミコが突然まともなことを言い始めた。

みんなユミコの続く言葉を待つ。

突然ゲームのログインボーナスを受け取り始めるユミコ。

アンビエントなプレイリストの中、虚空を舞ったキメ、とやらは

シノブのアイプチがペロリと剥がれたことで前へと進むようだった。

アイプチの匂いを嗅ぎながらシノブは言う。

「とりあえず駅前のラ・とかル・とか書いてある店のお菓子でも差し入れてみる?」

シノブは同性との付き合い方が下手だ。特に好きな女の子に対しては強気というか、どうもイキってる気がする。

でもそれは私のことが好き、という証左なのかもしれない。

あと、本当は処女じゃない。

自分らしさを大事にしていたいという強い気持ちが時折変わった言動に写ってしまいがち、そんな子だと私は感じる。

「彼はディープキスの時に耳に指を突っ込んできそうではある」

ユミコは会議が始まってから、ずっと携帯電話をいじくり倒している。

どこか上の空、先週渋谷のHUBでトイレ待ちをしていたら

ナントカ商店とか言う前掛けを身に着けた外人にいきなり手を握られて。

どうもその事が起因してるみたいだね。しきりに通知を気にしている。あと会社にAmazon届けるのそろそろやめよ。

「シノブ、そんなウィンドウ小さくしてショーシャンクの空に見ないで。その映画でサボるならせめて損なわないで。」

ツッコミばかりのタケコは最近ダイエットにはまっているみたい。

2週間毎日サラダチキンを食べている。味はスモーク派だって。

でも、効果はかなりあるみたいで、7kg減量したって。

そんなにダイエットしたらいつか0になっていなくっちゃうよ。

あと内ももを鍛えすぎて筋肉痛のようで、微細なコマネチみたいに高速でさすってる。

それを見たユミコが一言。

「まるでグリフィンドールだね」

「どういう意味yumiko」

「ハリー・ポッターの出身校」

「いや、例えろよ!出身校だから何なんだよ。まるで、の補足をしろよ」

「恋ってのは、考えることからだよ」

「そこー、前の男の名言風を自分の言葉のように言わないー」

ラブホテルのライターは問題にしかならないので生産停止しろ。とTwitterでつぶやきながらシノブ。

タケコもそれは確かに、といった表情。

もちろん私達は全員喫煙者だ。

紫煙が漂う。ニコチンの力で血管の拡張/収縮の蠕動運動に合わせて心の思考が脳へと送り出されていく。

煙を吐き出した後、突然。過去の恋がよぎる。

私の涙で、東京を丸洗いできるんじゃないかと思ったあの恋がよぎる。

もう二度と江ノ島行きたくない。

ひいひい。やめよやめよ。考えるのやめよ。会議しよ。

さてさて、会議というものは何かを決定するものでなければならない。

日本全土の電車遅延を合わせた時間=無駄な会議が行われている時間、そんな事無いか。

でもユミコのいう通り、キメ、は常に必要だ。

そのための共通認識。共通認識のためにおしゃべりをしなければ。

ああ、アンビバレント。たのしすぎる。意味のないおしゃべりは。

「一体どうされたいんだ、いやどうしたいのかな私達は彼を、彼に?」

「翻弄されたいの」

「尽くすことができるだろうか、彼の底の底まで、愛し尽くすことが。」

「シェイクスピア?」

「刑期売り場?」

「売らないし、売れないし」

「ケイコ、刑期持ってんの。刑子ちゃん。」

「どういう経歴の人なんだっけ」

「履歴は辛い。男の履歴の女の履歴が本当に辛い」

「21世紀にもなるのに、なぜ履歴を削除できないの。生まれたときからそういう装備持たせてよ。」

「好きな人の秘密を暴くのは辛いよね、肺が潰れそう。臓器までもが、彼の虜。」

「…」

「いや、ごめんってユミコ。ツッコミ一回ミスっただけでその顔。その顔か。」

「求めすぎちゃだめだよyumiko」

わかってる、愛はまだ無い、まだ求めてない。

恋しか知らないし、恋の答えが欲しい。

身を焦がすのは週五日も働いていたら無理だ。

やけどぐらいがいい、舌の先がピリッと。舐めて治して。そんな感じ。

でも答えはね。ほしいよ。

そろそろ決まりだ、いや、初めから。

最後に私が口を開く。

「彼を、好きになろう」

以上、恋の前の会議。登場人物私のみ。所要時間1分。会議室は右脳と左脳の間にある。

一人きりだった喫煙所の扉を開け、総務のフロアへと。

「あの、飲み行きませんか」

「いいですよ」

私は今日の夜、飛べるだろうか。

2018年9月15日公開

© 2018 みやりまや

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