ディビジョン/ゼロ(10)

ディビジョン/ゼロ(第10話)

波野發作

小説

1,582文字

夜の街でぼくは迷宮に迷い込む。女たちはどこから来て、どこへ行くのか。

〈10〉

 

改札からスロープを下って線路沿いの道に出る。

右に曲がって歩道を歩いていく。

居酒屋からは酔っぱらったサラリーマン風の男たちが出てきて、いつまでも別れの挨拶を繰り返していた。

 

その脇をすり抜けて隣のビルの狭くて急な階段を上がる。

上がったところにエレベーターがあるので、乗り込んで5階へと上がった。

降りたところには赤い鉄扉があって、その奥が店だ。張り紙には「エステ・愛スクリーム」と書いてあった。

 

「ういー、いらっしゃいませ」

と客の顔も見ずに店員が言った。店員ではない、この男は店長だ。初めてではないので顔は知っている。

「ご予約ですか?」と行ってこちらを見て「ああ、お客さんか。予約ですよね」とようやくぼくだと気づいたようだ。

 

「15分で入れますから、そちらでお待ちください」と行って、携帯に電話をかけた。

ぼくは店の狭い待合室に座って、エロ週刊誌を手にしてペラペラと眺めた。

店長は電話で、じゃああと15分でお客さん行くからと言っていた。それはぼくのことだろう。

 

店長はぼくにコースはどうするか聞いてきた。おすすめは何かと聞くと90分だというので、じゃあそれでと答えた。

他には短い40分コースと60分コースもあるけれど、そういうのはバタバタするので好きじゃない。

2時間以上のコースだと、女の子が合わない場合苦痛な時間が続くのでリスキーだ。90分ぐらいがちょうどいい。

 

15分とは言っているが、実際は女の子から連絡が来るまで待つようだ。

支払いを済ませて、ぼくが手持ち無沙汰にしていると、店長が話しかけてきて「仕事帰りですか」などと聞いてきた。

「ええまあ」と答えて「遅くまで大変ですね」「IT系なんで」などと他愛もない会話をした。

 

「じゃあホームページなんか作れたりするんですか」「まあ、できますね」なんてことを話していたら女の子から電話がきた。

店長がぼくに小さなメモを差し出した。汚い字で「504 りんか」と書いてある。

カウンターの地図を指して、道順を教えてくれた。このビルではない別の建物のようだ。

 

駅前のビルを出て、バス通りを渡り、路地を入って裏通りの古いマンションに着いた。

エレベーターで5階へ上がり、504の前に立つと、扉が薄く開いた。

メモを見せるとすらっとした女が小声で「どうぞ」と言った。

 

マンションの中は薄暗く、いくつかの小部屋に仕切られていて、ぼくはその1室に案内された。

うながされるままに部屋に入ると、「すこしお待ちください」とすらっとした女が言った。

すらっとした女は奥の方で誰かと会話していた。何を言っているかわからないが、たぶん中国語だろう。

 

服を脱いでバスタオルを巻き、ベッドに座って待っていると、さっきとのすらっとしたのとは別の女が現れた。

ちょっと背が低くて肩幅がしっかりしている感じだが、ひどいブスでもないので安心した。

キャミソール姿の女は痩せ型でもないのに胸が小さくて残念だが、贅沢は言うまい。

 

「お客様シャワー行きます」とがっしりした女が他の女たちに聞こえるように言って、ぼくはバスタオル姿でユニットバスへ向かった。

この店は客だけでシャワーを浴びるシステムらしい。軽く流してすぐに上がった。

バスタオルを渡されて体を拭いて、小部屋へと戻った。

 

ベッドに横になると、がっしりした女が上からぼくにバスタオルをかけてマッサージがはじまった。

ひととおり足まで揉みほぐしたところで、仰向けにされた。

どうする? と聞くのでいくらか聞くと指を1本立てるので、財布から1万円を出して渡した。

 

 

 

2015年9月17日公開

作品集『ディビジョン/ゼロ』最新話 (全10話)

© 2015 波野發作

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