野間文化財団が主催する「第45回野間文芸新人賞」が6日に発表され、朝比奈秋『あなたの燃える左手で』(河出書房新社)と九段理江の「しをかくうま」(文芸春秋「文学界」6月号)に決まった。

 選考委員は小川洋子、川上弘美、高橋源一郎、長嶋有、保坂和志の五人。

 朝比奈秋は1981年、京都府生まれ。2021年「塩の道」で「第7回林芙美子文学賞」を受賞。2023年に『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。

 今作『あなたの燃える左手で』は泉鏡花賞も受賞するW受賞作となった。ハンガリーの病院で左手の移植手術を受ける主人公アサトを通し、自らの身体を、そして国を奪われることの意味を問う。

 九段理江は1990年、埼玉県生まれ。2021年に「悪い音楽」で「第126回文學界新人賞」を受賞。2023年に『Schoolgirl』で第73回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。「しをかくうま」は、馬と人類の歴史を語り直す壮大な叙事詩。

 候補作には、受賞作のほか安堂ホセ「迷彩色の男」(「文藝」2023年秋季号、河出書房新社)、石田夏穂『我が手の太陽』(講談社)、小池水音『息』(新潮社)、長島有里枝『去年の今日』(講談社)が挙がっていた。

 また「第76回野間文芸賞」には、川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(講談社)が選ばれた。

 なお、「第5回野間出版文化賞」には、俳優の芦田愛菜、俳優・エッセイストの黒柳徹子、将棋棋士の藤井聡太、同賞特別賞にTBSテレビディレクターの福澤克雄氏がそれぞれ選ばれた。

 朝比奈はこれで三島賞、野間新人賞の二冠を達成。芥川賞を含む新人賞三冠達成が一気に現実味を帯びてきた。今後の賞レースにも注目していきたい。