東京大学大学院人文社会系研究科・文学部(以下、東大文学部)は、大江健三郎文庫を正式に発足すると発表した。

 大江健三郎から自筆原稿などの資料の寄託を受け、2021年1月、大江と大西克也研究科長(当時)のあいだで寄託に関する契約を締結したのち、資料の整備と並行して、資料の利用について双方で検討を重ね、今年7月4日、大江の著作権継承者と納富信留研究科長とのあいだで寄託資料の利用に関する契約が締結されたという。

 寄託資料は、大江の自筆原稿・校正刷など1万8000枚を超えており、このような規模で現代作家のデジタルアーカイブが構築されるのは国内でも稀有。

 東大文学部では9月1日に、大江健三郎文庫発足記念式典を開催し、同文庫を正式にオープンする。研究者に対して、1万8000枚におよぶデジタルアーカイブ、3500点を超える資料の閲覧の場を提供するほか、HPやオープンセミナーを通して、研究成果を社会に発信していく予定。

 大江が亡くなってから多くの文人たちがその死を悼み、いかに影響を受けたかを語り、様々な追悼特集が組まれ、改めてその存在の大きさを知ったばかりだが、早くもこのようなかたちで偉大な作家の功績と研究資料が残るというのは歓迎すべきことだろう。今後の研究成果にも期待したい。

 なお、主宰の高橋文樹も大江の影響について常日頃語っている。大江についてのエッセイでも代表作や大江との思い出を紹介しているので未読の方は読んでほしい。