ノーベル賞文学者の英作家カズオ・イシグロの娘で、作家のナオミ・イシグロのデビュー短編集「ESCAPE ROUTES」の翻訳版が9月20日、早川書房から刊行される。竹内要江が邦訳を担当し、邦題は「逃げ道(仮題)」になるという。

 20年に英Tinder Pressから出版された。不器用な人々を幻想的に描いた「くま」「魔法使いたち」など8つの短編小説と、1つの中編小説を収録。サンデー・タイムズ紙は「魅力的な文章、奇抜な面白さ。厳しい現実を軽々と乗り越える、想像力に溢れた物語」と評価している。

 ナオミ・イシグロは、ロンドン大学大学院で英文学を学んだ後、イースト・アングリア大学で創作の修士号を取得。書店員としても働いていた。20年に「ESCAPE・ROUTES」でデビューし、21年には「Common Ground」を発表している。

 なお、カズオ・イシグロが21年に発表した『クララとお日さま』は今月、早川書房で文庫化される。SF、ファンタジー、歴史小説……と発表する度にジャンルを横断する作風で知られる父だが、ナオミはどのような作家になっていくのか。デビュー作は幻想的要素が強そうであるが「Common Ground」では、少年から青年へと成長する二人の友情を描いているようだ。こちらもいつか邦訳されるかもしれない。