仏作家フィリップ・ソレルスが5月5日、パリで死去した。86歳だった。AFP通信が6日、仏ガリマール出版社の発表として伝えた。

 1936年仏・南西部ボルドー郊外生まれ。本名はフィリップ・ジョワイヨー。妻は思想家で精神分析学者のジュリア・クリステバ。22歳で発表した初の小説「奇妙な孤独」で注目される。その後、「公園」(61年)、「ドラマ」(65年)、「数」(68年)などの実験的作品で、ロブ=グリエをはじめ、クロード・シモンなどに代表される戦後仏前衛文学「ヌーヴォー・ロマン(新しい小説)」の作家らと期を同じくして活躍。

 1960年には、前衛的な文芸誌「テル・ケル」を若手作家らと創刊。テル・ケル派とも呼ばれ、仏戦後文学の一翼を担った。1982年に終刊したが、その後、ソレルスは新たに「ランフィニ」を刊行していた。「女たち」「秘密」など邦訳も多数出版された。

 モーツァルトについて評した『神秘のモーツァルト』(集英社、2006年)は、堀江敏幸が翻訳している。「公園」でメディシス賞を受賞。2014年には、その功績を称え芸術文学勲章を授与されている。