講談社は9月27日、第44回『野間文芸新人賞』候補作品を発表。

石田夏穂「ケチる貴方」(講談社「群像」2022年3月号)、宇佐見りん『くるまの娘』(河出書房新社、2022年5月刊)、温又柔「祝宴」(新潮社「新潮」2022年5月号)、永井みみ『ミシンと金魚』(集英社、2022年2月刊)、町屋良平『ほんのこども』(講談社2021年11月刊)の5作。

「ケチる貴方」は、冷え性を克服するために高体温を意外な方法で得ることを知った主人公の人生そのものが変容する物語。芥川賞候補にもなった『我が友、スミス』にも見られる肉体改造をユーモラスに描く。『くるまの娘』は、祖母の訃報を受けて車中泊をしながら思い出の地を巡りつつ家族の変遷をたどる17歳のかんこと家族の物語。

「祝宴」は日本で外国人として育った娘、外省人の祖父、日本・台湾・中国で生きる父。いくつもの境界を抱えた家族を、小籠包からたちのぼる湯気で柔らかく包み込む感動長編。『ミシンと金魚』は、認知症を患う語り手が壮絶な人生を語る。

『ほんのこども』は、「やさしく恋するみたいに他の人体を壊す」元同級生あべくんの人生を小説にしようと試み、やがて小説家とあべくんの境界線があいまいになっていき、ナチスのホロコーストが物語を侵食する問題作。

11月上旬に選考委員会が行われ、受賞作が発表される。

個人的には『ほんのこども』を押したいが、『くるまの娘』や『ミシンと金魚』は文壇での評価が高い気がするのでこちらが本命か。