第13回『山田風太郎賞』の候補作品が9月28日、主催するKADOKAWAから発表された。

戦後日本を代表する大衆小説作家である山田風太郎の独創的な作品群と、その作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設されたもの。ミステリー、時代、SFなどジャンルを問わず、対象期間である毎年9月1日から翌年8月31日(奥付表記)までに刊行された日本の小説作品に発表され、最も面白いと評価された作品に贈られる。

今回候補となったのは、浅倉秋成『俺ではない炎上』(双葉社、2022年5月刊)、小川哲『地図と拳』(集英社 2022年6月刊)、砂原浩太朗『黛家の兄弟』(講談社、2022年1月刊)、蝉谷めぐ実『おんなの女房』(KADOKAWA、2022年1月刊)、早見和真『八月の母』(KADOKAWA、2022年4月刊)の5作。

『俺ではない炎上』はある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男がSNSに晒された個人情報から必死の逃亡を続けつつ事件の真相を探る社会派ミステリ。『地図と拳』は日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮を描く、歴史×空想小説。

『黛家の兄弟』は、架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ第二弾で、第35回山本周五郎賞受賞作。『おんなの女房』は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁いだ武家の娘・志乃と、女形として人気の美しい男・喜多村燕弥のいびつな恋愛を描く。『八月の母』は愛媛県伊予市から出たいと願う、越智エリカとその機会が訪れようとするたび立ち塞がるスナックを経営する母・美智子の母と娘、そして身ごもったエリカによる”鎖”の物語。

個人的に『地図と拳』を押すが、『黛家の兄弟』が山本賞とのW受賞になるかも注目したいところ。選考会は、10月21日に行われる。