今月は新潮、文學界、群像、すばる、文藝の5誌が発売された。5誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2026年8月号

・【特集 若手表現者が読む、村上春樹『夏帆―The Tale of KAHO―』】として、村上春樹の最新刊を七名の若手表現者が新刊について語る。井戸川射子「我々の誕生は距離の誕生である」、九段理江「浦和、武蔵境、足立区、新小岩」、鈴木結生「the use of a book」、ZORN「二行目をいかに遠くまで飛ばすか」、福尾匠「夏帆は「テニスシューズ」を履かない」、マーサ・ナカムラ「人間が生まれ落ちる瞬間の音」、三宅香帆「猫と母殺しのあたらしい旅路」を一挙。

・石橋英子×濱口竜介による往復書簡「死んで、生き直す――『急に具合が悪くなる』の余白に」が掲載。

・「第14回 河合隼雄物語賞」は戌井昭人「おにたろかっぱ」。学芸賞は受賞作なし。選考委員岩宮恵子(物語賞)/若松英輔(学芸賞)による選評が掲載。

・多和田葉子による新連載「幻の熱帯雨林」(第1回)がスタート。

文學界 2026年8月号


・【特集】「北海道と文学」として、桜木紫乃×円城塔による対談「〝端っこ〟から小説を書くために」。日本文学の中央集権的な構造にどう抗うか。地方で創作をする絶望と希望をめぐる、赤裸々な対談。さらに、エッセイでは加藤千恵「傘はささなかった」、久栖博季「内なる北海道を書く」、奥野紗世子「地の利」が掲載。

・【文学フリマ東京42 ルポ】として、一穂ミチ「六年ぶりの帰省」、青野暦「読み止しの記録──文学フリマで出会ったことばたち」。

・【創作】では、芥川賞作家も鹿島田真希による十年ぶりの長篇「祭典」、筒井康隆「WHO?」、デビット・ゾペティ「愛してやまぬ国」が掲載。

・町屋良平による連載「無限水晶」が最終回を迎える。

群像 2026年8月号

・【論点】として、内田由紀子「良い人間関係とは何か? 日本社会における「親密さ」と場のウェルビーイング」、関口涼子「翻訳の行為が救うもの」、宮原ジェフリー「光は誰のものか TOKYO LIGHTS 2026と公共空間の定義権」。

・創作では、長野まゆみ「雷の夜に、ぼくは」、天埜裕文「五人の姉」、くどうれいん「白の昼餉」、中篇では杉森仁香「こういう音で形とか愛」、北条裕子「窓の中の私」。

・【批評】では、安藤礼二「大江健三郎論」、工藤庸子「野上彌生子の「秀吉と利休」」が掲載。

・伊藤比呂美による新連載「なつーら 私的歳時記」がスタート。

すばる 2026年8月号


・【創作】では、小野正嗣「夏の納屋」、木村紅美「白鳥たちはただ渡る」が掲載。

・【すばる海外作家シリーズ】では、マリア・ジュディッテ・デ・カルヴァーリョ「アルミンダ嬢さん」(訳・解説/木下眞穂)。

・宮本輝による新連載「花園を探せ」〈1〉がスタート。

・武田砂鉄の連載「ルサンチマンをぶち壊せ」〈12〉が最終回を迎える。

文藝 2026年秋季号

・【特集1 失踪・家出・エスケープ】として、短篇では、石田夏穂「私を某国に連れてって」、奥野紗世子「惑星と大銀杏」、木村友祐「握った手を放すかも」、相川英輔「丸洗い」。短歌では穂村弘選“失踪”短歌10首。ブックガイドでは、佐藤究・松永K三蔵・江南亜美子・駒田隼也・豊永浩平・杉江松恋・倉本さおりによる人生を揺さぶる「失踪」文学3選が掲載。

 さらに、エッセイ・論考では、島本理生「銀河鉄道には乗らない」、大森時生「thin たぬき」、いがらしみきお「リセット三題」、金川晋吾「いなくなって、戻ってくる父」、星野概念「星野狂セリ、みたいな」、森あらた「繰り返す、ニューノーマル」、村上靖彦「刑務所で出会ったAさんの逃走から教わる」。

・【特集2 AIは中原昌也を拡張できるか】として、高橋源一郎「中原昌也と声帯AI中原昌也とオレ、エトセトラ」、高橋源一郎×中原昌也×宇川直宏「声帯AI中原昌也と未来の文学」。

・「第9回 日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」受賞者は中井優子。課題作のキム・メラ著、中井優子訳「エコール」が掲載。審査員の星野智幸、オ・ヨンア、古川綾子による審査評と受賞の言葉も。 

・【特別寄稿 戦争がふたたび日常になったこの時代に】として、皆川博子「声」と辻真先「戦争が日常だった時代のぼく」が掲載。

以上、今月の文芸誌読みどころを紹介した。読書の一助になれば幸いである。