2017年8月4日、京都府宇治市は第27回紫式部文学賞の選考結果を発表した。出版社や作家たちから推薦された全58作品のなかから選ばれたのは、津村記久子の短篇集『浮遊霊ブラジル』だった。贈呈式は11月に宇治市文化センターで執り行われる。

1991年に創設された紫式部文学賞は、女性作家による文学作品を顕彰する文学賞だ。対象となるのは前年1月1日から12月31日までに発表された作品で、文学に関係してさえいれば評論や研究書もノミネートされるなど懐の広い文学賞となっている。昨年は久々に詩集が受賞し話題となったが、今回は2年ぶりに小説が選ばれた。

今回受賞した『浮遊霊ブラジル』は全7篇から成る短篇集で、2010年から2016年にかけて文芸誌で発表された作品がまとめられている。表題作では現世への未練タラタラな死者が主人公となっており、今の時期にぴったりな作品といえるかもしれない。また、川端賞を受賞した「給水塔と亀」も収められているので、現時点での津村短篇の集大成ということもできるだろう。

津村記久子はこれまでに芥川賞、野間新人賞、織田作之助賞、川端賞などの受賞歴があり、今回の受賞でまた一歩順調に文壇の階段をのぼった格好だ。アラフォー世代の女性作家のなかでは、川上未映子と並んで今最も勢いのある作家といえるのではないだろうか。今後のますますの活躍に期待したい。