作家の早乙女勝元が、5月10日に老衰で死去した。90歳だった。

早乙女勝元は1932年生まれ、東京都出身。太平洋戦争下の中で子供時代を過ごしており、12歳の時に東京の下町を襲った東京大空襲を経験、戦争の災禍を目の当たりにした。戦後は少年工として働く傍ら文学を志し、1952年に「下町の故郷」で直木賞候補となった。1956年に小説「ハモニカ工場」で作家として独立を果たす。その後、各地で戦争体験を収集し、1970年には「東京空襲を記録する会」結成の発起人となった。1974年に、「東京大空襲・戦災誌」で菊池寛賞を受賞した。山田洋次監督との親交でも知られている。

東京大空襲における自身の戦災体験のみならず、各地に赴いて戦争の災禍の情報を収集していった。また海外では大日本帝国の侵略やホロコーストについても調査を行い、戦争と平和について幅広いテーマを書籍にしていた。2002年には、民営の「東京大空襲・戦災資料センター」の初代館長に就任し、17年間にわたって館長を務めるなど、近年も精力的に活動を続けていた。