フランス政府は2017年12月18日までに、マルキ・ド・サドの未完小説『ソドム百二十日』の直筆原稿を国宝に指定する手続きをとった。同原稿は今週中に民間のオークションにかけられる予定だったが、国外流出を懸念して政府が先手を打った形だ。事前の予想では、日本円で8億円ほどの値がつくと想定されていた。

『ソドム百二十日』は1785年、サドが複数の性犯罪等によりバスティーユ監獄に収監されていた際に書かれた作品だ。ありとあらゆる性的倒錯行為を描いた小説として名高く、パゾリーニ監督による映画版(邦題『ソドムの市』)が世界各国で上映禁止となったことでも知られる。

しかしその直筆原稿は、サドが精神病院へ強制移送されてしまったことからバスティーユに置き去りにされ、死後まで発見されることはなかった。そして発見以後はつぎつぎとコレクター間で転売が繰り返されており、現在はフランスの投資会社が所有していた。なおこの投資会社は、歴史的な稀少原稿を買い集めていることで国内では有名だ。

オークション主催会社によると、『ソドム~』の原稿は当局からの指導で出品の取り下げと国外持ち出し禁止が急遽命じられたという。また、併せて出品される予定だったアンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』の直筆原稿についても同様の措置がとられたようだ。

日本でもつい最近、高須クリニックの高須克弥院長が『昭和天皇独白録』を国内に置くため約3000万円で落札するというニュースがあったが、政府として迅速にこうした措置を取れるというのは固有文化を重視するフランスらしいと施策といえそうだ。