破滅派の電子書籍販売代行サービスは2016年9月から価格を自由に決定できるようになりました。これまでは「400字詰め原稿用紙一枚あたり2円」という機械的なルールで値段を決定していましたが(参照:Kindleに電子書籍を出すお仲間を募集します)、今後は自由に価格を決定できるようになります。
価格のリクエスト方法
電子書籍の販売価格については、破滅派編集部がKindle Direct Publishingに登録するため、皆さんが直接決定することはできません。価格をリクエストいただき、その反映をお待ち下さい。
価格のリクエストは管理画面の「公開」ブロックにある「希望小売価格を編集」というチェックボックスから行えます。
具体的な価格戦略
さて、今回は「自由に価格を決定できるようにした」というだけですが、同人諸氏は次のような基本方針を取ることをお勧めします。
- 原稿用紙100枚程度で99円の作品を用意しておく
- その他の電子書籍は枚数に限らず250円以上とする
- 最高価格帯の作品は999円以下にする
原則1. なぜ99円の作品が必要か
まず、あなたの作品が購入されるシーンを考えてみます。作品を個別に発見した場合を考えましょう。次のようなケースです。
- Amazonでたまたま「ゾンビ」と検索して、あなたの書いたゾンビ小説が発見された
この場合、その人が購入を決定するには「価格」「表紙」「あらすじ」などが主な購入検討対象要素になります。
では次に、あなたという作家個人に誰かが興味を持ったとしましょう。きっかけはなんでも良いのですが、たとえばあなたがtwitter上で「特別養護老人ホーム落ちた、日本死ね」という投稿で話題になり、それを見た人が「どんな人だろう?」と興味を持ったケースです。
この場合、その人はあなたの作品を買うことを半ば決定しており、その中から何を買うか一覧を見ます。そして、興味を持ちそうな要素がない場合、確実に価格が購入検討対象要素になります。
経験的に、作家個人に興味を持った場合、ほぼ確実に一番安い作品が買われます。したがって、Amazonで販売できるもっとも安い価格である99円の作品が必要です。この作品はあなたにとって名刺代わりとなります。
原則2. なぜ250円以上にするのか
Amazonでは2種類のロイヤリティ率(35%, 70%)が存在します。70%のロイヤリティにするためには次の条件を満たす必要があります。
- KDPセレクトに登録すること(したがって、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となります)
- Amazon Kindleでの独占販売であること
- 価格が250円以上であること
破滅派ではKindleでの独占販売以外していませんので、250円以上であるか否かによって単にロイヤリティ(=利益率)が変わることになってしまいます。
価格 | ロイヤリティ | 破滅派の手数料 | あなたの収益 |
99円 | 35% | ロイヤリティの30% | 24円 |
299円 | 70% | ロイヤリティの30% | 146円 |
安い作品の方が売りやすいのですが、あなたの手元に入る金額には6倍もの差があります。したがって、あなたが電子書籍の販売でまともに収益をあげようと考えているのであれば、ロイヤリティ70%以上の作品を増やしていく必要があります。
原則3. なぜ999円以下にするのか
ある程度小説を書き慣れている方は、500枚以上の大作を書いたことがあるかと思います。破滅派全体では多くありませんが、筆者(高橋文樹)の作品には500枚以上の作品が3冊あります。
この場合、価格が1,200円とか1,100円とかになってしまうのですが、これには苦情が殺到しました。やはりKDPでは低価格帯の作品が主流なので、1,000円超えは面食らうようです。
おそらくですが、価格帯としては299円〜599円ぐらいに収めておくのが売りやすいはずです。現時点での紙の本の文庫を競合と捉え、それよりちょっと安い価格で勝負するのがやりやすいでしょう。
とはいえば、別のやり方も考えられます。それは「ブランドで勝負」することです。破滅派で現在(2016年9月)で最も収益を挙げているのは、900円台の作品です。作家個人のブランド力を高め、「◯◯の作品だったら買う!」という状況を作ることができれば、多少高くても問題ないでしょう。
経験的に「高すぎると敬遠される」ということがわかっているだけであり、販売量が増えてくればこの知見も溜まっていくはずです。
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以上、現時点でわかっていることを共有しています。もしご意見などありましたら、コメントいただければ幸いです。