【特別インタビュー】365日、母子オムツっ子の記録

破滅派16号原稿募集「追悼・山谷感人」応募作品

牧野楠葉

対談など

25,149文字

 私は山谷感人を知らない。何故なら破滅派同人となったのは二〇一八年だからである。ただ、同人仲間によってアル中のヒモであることは知らされている。アル中のヒモ――私は、そのような存在を二十四歳のとき、家で飼っていた。彼は私の稼ぎを一瞬で酒に変えてしまい、さらに金銭を要求した。唾棄すべき存在である。そこから私はアル中のヒモをゴミと認識するようになった。
 しかし今回はそんなアル中のヒモ、山谷感人の追悼企画である。彼のことを盛り上げなければならないのだ。だからこそ私はさらなる駄目エリートを探すべく、ツイッターに最近実装されたボイスチャット機能『スペース』を活用した。

 二〇二一年、九月に『フェイク広告の巨匠』(幻冬舎)を上梓した牧野楠葉が、次回作のネタを求めて毎日スペースを開いていると、実母とオムツプレイ及び赤ちゃんプレイをやっている園田さん(仮)と出会った。園田さんは寂しい、といきなり私のスペースに入ってきたのだ。ここからは実録インタビューをご堪能頂きたい。これはスペース上でのインタビュー記録である。本人には紙の破滅派作品としてこのインタビューを掲載することに許諾を取っている。

 

牧野 先ほど自分のことを複雑な状況にある、とおっしゃられていましたが、どういう風に複雑なんでしょうか?

園田さん 自分のことを放っておかれてる、みたいな。

 でもまあ言うて園田さんも三十歳なわけじゃないですか。

 でも母が同僚ともオムツプレイをしているのは複雑です。本当に気持ちがぐちゃぐちゃで複雑です。

 実際に事件になりそうなことで発散しようとは思いませんよね?

 それはしませんね。

 逮捕されちゃうとまたお母さんと離れちゃいますしね。

 なんか、自分だけ赤ちゃん扱いしてほしいんですよね。

 友達とかはいないんですか? ずっとひとりですか?

 いないですね。

 作ろうとは努力したんですか?

 作ろうと努力はしたけど無理だった。

 なんで無理だったんですか?

 やっぱり病気のことがあって、オムツしてるっていうのがあって。

 病気ってもっと物理的なものでしたっけ、鬱とかじゃなくて。

 そうですね。もっと物理的なものです。

 病名とか聞いてもいいですか。

 神経因性膀胱と、過敏性腸症候群。(オムツを)病気でも履いてるし、プレイでも履いてるし。

 今どこにいるんですか?

 外で、自転車で走ってます。

 外に出かけるのは比較的に好きなんだ。

 やっぱり気持ちを落ち着かせようと思って。でもやっぱり考えちゃいますね。どうしたら気持ちを落ち着かせられますかね。

 やっぱり人に話すのがいいんじゃないですか。

 今どういうプレイしてるのとか考えちゃいますね。

 お母さん以外の対象を見つけられたらいいんだけどなあ。無理だからなあ。

 そうですね。

 やっぱり日記つけるのがいいと思いますよ。お金かからないし、チラシの裏とかでもいいし。

 どういう風に気持ちを表せばいいのかわからなくて。早く帰ってきてオムツを取り換えて欲しいっていうのもあるし。

 それは嫌がらずやってくれるんですか?

 お互いやってますね。

 お母さんが悪いところもあるけど、園田さんが束縛しすぎるのも絶対よくない。

 束縛はしてないと思うんですよね。

 お母さんが自由にするのを拒むのは束縛ですよ。

 自分だけのものになってほしい。もっと赤ちゃん扱いしてほしい。

 もしかして、赤ちゃんのときにあんまり構ってくれなかったんですか?

 そうですね。赤ちゃんのときからっていうか、幼少期のころから父と母だけの世界だったので。両親の寝室が隣だったので、そういうプレイを見てたんですよ。だから結構……なんていうんだろう、構ってもらえなかったっていうか。

 お父さんが死んだことで、その「構って欲」っていうのが園田さんの中で爆発したというか。

 そうですね。

 やっと僕のものだ! みたいな。

 なんか死んだお父さんと同じプレイができるんだって思って。

 それに最初に応えちゃったお母さんも悪いと思います。でも、そもそも構ってあげなかったことが一番悪いです。

 ですよね。生活の一部にオムツがあったので。幼稚園から。で、その、お母さんとお父さんが赤ちゃんプレイしてたのを見て、で、結構気持ちが複雑で。小さい頃から父と母の赤ちゃんプレイを見ていて、お父さんのオムツを取り換えているのを見ていて、で、なんか、おっぱいは出てなかったんですけど、おっぱい吸わせてるのを見て。

 自分も吸いたいなと。

 そうですね。

 でも小さい頃は母乳だから吸ってたわけじゃないですか。

 そうですね、小さい頃は。

 お父さんのプレイを見て、大人になってからも吸いたいなって思ったんだ。

 そうですね。

 逆にどうやったら今の複雑な状況から逃れられると思いますか?

 うーん……どうやったら……自分だけを構って欲しいというか。

 いや、お母さん抜きで。

 わかんないんです。

 まあ、わかってたらやってるか。

 お母さんがお父さんのオムツを替えるときに、赤ちゃん言葉で、「いっぱい出ちゃいましたねー」とか、「キレイキレイしますよ」とか。でその、取り換えるときに、口でやってるのを見てたので。おっぱい吸わせて手でしごいてたり。オムツ取り換えるときも赤ちゃんみたいに足首もって取り換えてたり。結構気持ちがぐちゃぐちゃです、本当に。

 で、また新たな男が現れたわけですからねえ。

 そうですね。

 その男は、家に来たりはしない?

 家には来ないです。外で会ってるんで。

 もし偶然会ったら、園田さんはどうなるんですか?

 多分、「お母さん返せ」って言いますね。

 小さいとき構ってもらえなかった園田さんは可哀想だけど、でも、いつかは脱却しないといけないと思うんですよ。

 脱却っていうのは。

 つまり、お母さんがいなくても、いい状態になることです。だって、お母さんは明らかに園田さんより早く死ぬじゃないですか。

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2021年10月24日公開

© 2021 牧野楠葉

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