MMインタビュー一九九七

モロゾフ入門(第4話)

第28回文学フリマ原稿募集応募作品

アシリ・ユク

対談など

4,830文字

1997年に実現したマリリン・マンソンの初来日。
それに合わせて行われたインタビューが都内のラーメン二郎インスパイア系の店で行われた。

このインタビューは、当時付き合いのあった音楽雑誌に掲載される予定だったものだ。読めばわかると思うがとある事情によって掲載は見送られた。今回、ふとあの日のことを思い出しデスクを漁った。ひきだしの奥にある当時のフロッピーはそのままで、すんなりとデータも取り出すことができた。恐らくは一九九七年の初来日の直後のものだと思う。英訳にやや拙い部分もあるかもしれないがそこは勘弁してもらいたい。

 

 

――今日は突然の依頼にも関わらず快諾いただきありがとうございます。渋谷でのライヴはいかがでしたか?

マリリン・マンソン(以下MM):やあ、日本は初めて来たんだけど、なんというか、とても礼儀正しい国だね。空港でのチェックでそのまま逮捕されるんじゃないかとハラハラしたよ(笑)

――ライヴはどうだったかと聞いているんです。

MM:ああ、ライヴね。ファンがしっかりと僕の曲を聴き込んでいるのを感じたよ。こんなにノッてくれるとは思わなかったしメイクや恰好も含めてクレイジーなファンが多くて嬉しいね。

店員(以下TI):ご注文は?

――小の麺少な目。マンソンさんはどうされます?

MM:えっ。

――マンソンさんの注文はどうしますかって。

MM:あー、そうだな。適当に頼むよ。郷に入っては郷に従えって言うしね。

――じゃあ彼は大の麺固めで。

TI:かしこまりましたー。小の麺少な目イチ! 大の麺固めイチ!

MM:なんだって?

――ラーメンを食べたいと仰っていたので日本で一番の店に来たんです。

MM:そうじゃなくて、まあいいや。

TI:お冷置いときますねー。

――二郎インスパイア系のなかではたぶんここが一番で、あっ俺グルメライターもやってるんですが、券売機じゃなかったりコールの仕方も若干違いはあるけど東京近郊で食べ歩いた中では断トツでキてますね。豚も大きさはあるんですが臭みも少なくて脂も適度に抜かれてて食べやすくてたまにだけど女性のお客もいたりして、そうそう、僕一回だけファミリーで来てるの見て笑っちゃって。そりゃ男の子だけど、ボク、ここはちびっこが来るとこじゃないぞ、って(笑)

MM:オーケー、なんとなくだけどここが特別な場所だってことは分かったよ。

――すみません、ラーメン好き過ぎてなんか喋りすぎちゃって。では早速ですがアルバム、アンチクライストスーパースターについて伺いたいと思います。一九九四年に発売されたファーストアルバム、ポートレイトオブアンアメリカンファミリー、翌年発売されたセカンド、スメルズライクチルドレン。それとはうって変わって、今回のアルバムではサウンドの面でかなりヘヴィさが増していますね。これは意図して行われたものなのでしょうか?

MM:僕が影響を受けてきたものは様々だ。ファーストやセカンドは、そうだな、サウンドとしてはブルースを経由したロックが核としてあった。ギターの歪みで言えばオーヴァードライヴ、血の通ったウォームなサウンドさ。

――ロックンロールニガー。

MM:そうだね(笑)で、スメルズライクチルドレンのレコーディングが終わって、ツアーもやって、何か月後だったかな、自分の部屋で改めてアルバムを聞いてみたんだ。愕然としたね。そこには僕の怒りが収まりきっていなかった。曲の完成度には満足している。だけどサウンドが問題だったんだよ。悔しくてさ。部屋中の物を窓の外にぶん投げて、パトカーのサイレンが聞こえてきたあたりで、

TI:お客さん、にんにくどうしますか?

――ニンニクヤサイマシマシ。マンソンさんどうします?

MM:えっ。

2019年5月6日公開

作品集『モロゾフ入門』第4話 (全13話)

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© 2019 アシリ・ユク

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