人間が七十億人いれば七十億通りの人生、死者を合わせればどれくらいだ?まあ分からないので十のn乗としておいてやるけど、十のn乗通りの人生が、そして十のn乗通りのクソのひり方がある。要はみんなちがって、みんなファッキングレイトということだ。そして仕事のやり方ひとつとってもみんな違う。俺は作家なんだが――作家っていうのはこの世で最高にクレイジーな職業である、なぜかというと頭の中でひりだしたクソにも満たない妄想から金が生まれるからだ――小説の書き方ってのも書く奴によってそれぞれ違う。何を使って、いつ、どこで、書くか。俺の場合はまずデリヘルを呼ぶ。女はできるだけ歳を食ってる方がいい。熟女ってやつだ。そして決して男に媚びない奴だ。むしろ敵視しているぐらいの方がいい。あるいはそんな性欲を吐き出すために決して少なくない金をつぎ込まねばならない人種を軽蔑を通り越して憐れんでさえいるぐらいの女だ。そんな女を働かせている店など普通はあり得ないのだが、僕の知る限りそんな店がこの世に一軒存在する。名前は「おふくろの味」だ。電話をかけるといつもの内勤の男が「お待ちしてました」と第一声。次の言葉が「いつもの子ですね、空いてますよ」ならそれに越したことはない。「すいません、きょうはすでにあのババアの予約は満杯でして」ならしょうがない。今日は俺も休みだ。いつもの子というのは多分歳は五十ぐらいで顔はトーキョーのガバナー、ユリコ・コイケとユナイテッドキングダムのテリーザ・メイ閣下、ユナイテッドオブステーツのヒラリー・クリントンのいいところだけを掛け合わせたような女のことで、週に必ず二回は世話になっている。俺たちの関係はママに育てられた期間と同じくらい長いから向こうも何をするべきか完璧に心得ている。まずデリヘル嬢(婆?)は玄関のドアを何度も拳で叩きながらこう叫ぶ。「開けろこのゴキブリ以下のクソ垂らしの死に損ないが!そこはてめえの部屋か?違うだろ。その前にここはわたしの家なんだよ。てめえにドアの鍵を閉める権利があるなんて誰が教えたよ。開けねえとてめえを自分のクソで窒息させてやるからな」なんと懐かしい響き。俺の意識は一気に幼少時代へタイムスリップする。ああママ。俺はズボンを脱ぎあらかじめ履いていたアテント一丁になり、慌ててドアに向かいカギを開ける。そのカチャという音と同時にドアは突風のように開く。嬢あるいは婆は一歩俺の部屋の中へ踏み込み、いきなり右ストレートを喰らわす。そして馬乗りになって俺の顔を両手で三往復殴る。「お前何やってた?わたしが買ってやった参考書はどこやった。まさか机で閉じたままになってるのがそれか?じゃあ何か?お前はせっかくクソの役にも立たねえお前をわたしが少しでもクソの役に立つようにしてやろうと金を出して与えた参考書に手をつけず、挙句またお前の頭の中のクソを垂れ流してたってことか?」その通りです。ごめんなさい。俺は顔を腫らして泣きながら這ってダイニングへ逃げる。そして嬢は突き出された俺のケツを蹴り、アテントを脱がせ、台所にある菜箸を肛門に突っ込む。「忘れてないよな、この痛みをよ。漏らすんじゃねえぞ」
僕は痛みで気絶しそうになりながらバトル鉛筆を握り、ポケモンが表紙の自由帳に文章を書き殴り始める。デリヘル婆が突っ込んだ箸をぐりぐりと動かすたびに俺は一万字を書く。頭の中では情景とそれを描写する言葉がニコニコ動画のコメントのように流れる。その生成されたクソは一切推敲されることもなく俺の指を伝ってひり出される。ポケモンの自由帳が俺の便器だ。我慢など存在しない。それは即座に垂れ流される。俺は九十分ずっと突っ込んだ箸を動かされ続ける。終わるころには真っ黒になった自由帳が五十冊ほど出来上がる。今こうして君が読んでいる文章もこのメソッドで書かれたクソだ。吐き気を催すか?だが俺はこうしないと文章を書けないのだ。デリ婆は八割以上埋まった菜箸を引っこ抜き、塞き止められていたクソと血の混じり合った液体をかわしつつ、スマホで救急車を呼ぶ。おれは搬送され最低三ヶ月は入院する。
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