九章　スキュレとカリュブディス

ユリシーズを読む人々の肖像（第10話）

二〇世紀文学の金字塔『ユリシーズ』を発刊一〇〇年経った今、読みながら綴る日常。

タグ: #ジョイス #ユリシーズ

評論・批評

324文字

この章ではハムレット論からジョイスの詩に対する思想などが大胆に開陳される。とても刺激的な対話形式になっている。ジョイスはイェイツに強く反発していたが、ここでは彼の話や、出版業者ジョージ・ロバーツなど彼の身近にいた人物たちについて会話が及ぶ場面もある。こういうことを知って読むと、小説とエッセイの曖昧さに考えが及ぶ。

さらに、グレゴリア聖歌の記譜まで挿入されるなど、この後に続く『フィネガンズ・ウェイク』のその実験性を思わせるような表記も。小説という創作形態をどこまでも拡張しようと試みたジョイスの筆が留まるところを知らなくなり始めた感じが窺える章だ。彼の支援者だったエズラ・パウンドでさえ、その先進性に戸惑ったいうエピソードが納得できる。

© 2023 松尾模糊（ 2023年4月25日公開）

目次

十二章　キュクプロス 2023 年 12 月 3 日（3年前）
十一章　セイレン 2023 年 12 月 2 日（3年前）
十章　さまよう岩々 2023 年 6 月 22 日（3年前）
九章　スキュレとカリュブディス 2023 年 4 月 25 日（3年前）
八章　ライストリュゴネス族 2023 年 1 月 19 日（3年前）
七章　アイオロス 2023 年 1 月 8 日（3年前）
六章　ハデス 2022 年 12 月 26 日（3年前）

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著者

松尾模糊破滅派編集者

一九八三年生まれ。フリーライター、編集者。福岡大学法学部卒。二〇〇七年に単身渡英し二〇一二年に帰国後、様々な職を経ながら執筆活動を開始。二〇一八年から破滅派に参加。文芸雑誌『代わりに読む人１創刊号　特集：矛盾』に掌編「海浜公園建設予定地」寄稿。

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