将来からです

多宇加世詩集(第18話)

多宇加世

590文字

詩です。とある公募の落選作です。

冬から数えて傷つけてなければ

青い葡萄の房を大きな手鏡に載せて

オリーブオイルをかけて祝福する

爪で着火したもう一つの私の顔が赤面する

テレビ画面には歌詞の遅れた生放送

春から数えて傷つけてなければ

いまだに信じられるんだけど

燃えたのは鏡のなかの部屋のほうだった

私は誰の部屋をなくしてしまったの

夏から数えて傷つけてなければ

ヘアゴムを集めてた

ことすらも忘れてしまったかもしれない

喋り始めが意味はなくとも

笑ってくれるよ 街中で 木で

秋から数えて傷つけてなければ

有無言わさぬ恋の都会と差異の

ビルが空うつす 雲と雲を

くっつけて窓辺で人が笑ってる

本当はあの人たちになりたかった

いいやなりたくなかった

だから今ほっとしている でも

檻の外からでも名前で呼んでほしい

カスタネットのお手紙ありがとう

祖母は宗教や外国語が今後大切だという

だがそれは私の幼少期 晴れ間に

帰って来た時間と主題の頃から

ずっと言っていたことだ

終わりの食パンたゆまぬ脱力

金縛りのあとの冷えた汗

好きな人が見たらどう思う塩染み

わざわざありがとう強きを抱いている

モニターが黒をうつしている

先にある意味ではなく私がいる

何かがあなたに似ている

胸の丘陵 肩の峰

誰かがあなたを好きでいる

頭にコルク 足裏に球

ぼーくーらっ 私たち いーのーちっ

偽陽性 花が 咲くんだよね

冬春夏秋の空

澱みなく飲めた間隙のスープ

昔のように思う光 埃舞うブラインド

訪ねてきてほしい

私も半分はそこへ旅立つので

2023年7月25日公開

作品集『多宇加世詩集』最新話 (全18話)

© 2023 多宇加世

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"将来からです"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る