詩「ターロルス」

藁食む兎(第9話)

多宇加世

861文字

ティーンエイジニンジャのことを知っているともっと楽しめます。

私を愛してると尾川は訊いたが古島は、ねー、とも鳴かなかった。それだけ尾川が真剣で昼日中のアトモスフィアが固まったのだ。古島というのは尾川の旧姓でもある。たまにこうして実家に戻っては古島を撫でる。まるで自分の思い出を撫でているようだ、と尾川は思う。本当は尾川は離婚して、姓は古島に戻ったのだが、色々なわだかまりもあり、まだ今は夫の姓を名乗っている。ライクアニンジャ、ウィーアザニンジャ、カマカマゲン。尾川はなんかそんな歌を唄って古島を撫でた。あ、違ったかも、なんか思い出せそう、尾川は思った。適当な歌が何かを引っ張って来ることは尾川にとって日常茶飯事なことだった。あ、「ティーネジミュータンニンジャターロルスだ!」。昔のアメリカのアニメの主題歌。弟が好きだったんだよ。亀の忍者が下水道に住んでいる話。古島。知ってたかな? 尾川は訊いた。今度は、ねーん、とひと鳴きした。ミャータンジェンという物質が生き物の要素同士をくっつけて進化(?)させる。亀は人と接したから人型の二足歩行の忍者になった。考えてみると悪夢だ、吐き気がする。でも弟がハマってた理由もわかるっつうか。な、古島。古島がいまミュータンジェンに触れたら私の影響を受けて人型の猫になるのかな。古島は猫だ。私がミュータンジェンに触れたら猫型の人になるのかな。先程から撫でている古島はいつの間にか実家にいる猫だった。尾川の弟はそのようなある日消えてしまった。現代の神隠しと言われ、マスコミがこぞってやってきた。尾川は、「あ!」と言った。「古島、ひょっとして、あんた健志?」ミュータンジェンで弟の健志は猫になってしまったのでは? ないない、姉はすぐに撤回して、また古島を撫でた。猫はまた、今度はこう鳴いた、「姉さんは夫婦別姓に賛成? 反対?」と。その後でさらに「ねーさーん!」と。それは紛れもなく人間の子供の声だった。そうまるで……。尾川はこれは夢だ、と思った。ただ、確かめたくてもう一度、「私を愛してる?」と訊いた。古島は二度と何も答えなかった。二度と帰って来なくなってしまった

2021年3月23日公開

作品集『藁食む兎』最新話 (全9話)

© 2021 多宇加世

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