常夜に2人の女性が居て、
その1人が添い寝をしてくれた。
寝ている背中を白い狼のような犬が駆けて、
目が褪めた。
今日の娜娜は、
豊穣と収穫を帯びていた。
死出の餞にと、
幣をくれた。
門出に花はなく、
子の陰嚢に似た蟷螂の卵が見下ろしていた。
破れ間も見える走行中のフロントガラスに、
微かな霙が音を立てていた。
この前に外出したのは、
初詣だった。
郵便局へは徒歩で移動したが、
もう脚は使い物にならない。
電柱に、
白い猫と黒い猫が居た。
郵便局で、
虚代の呪物を祓い返した。
彼の別の錬金術師は、
今は朝を求めて陰府を旅しているらしい。
日陰の錬金術師の旅の常夜には、
もう二度と朝はない。
白く甘い梅の香を匂い、
破れている物置の社を写した。
待ち人の居ない神社で、
双子の力石に触れた。
黄色く甘い梅の花は地ったのかも知れず、
枝も僅かに刈られていた。
鳥居へ向かう木と木の間に、
立ち止まった白い猫を見た。
虚代の縁無き女たちと靴底の塵を祓って、
神社を最後にした。
走行中に、
だいぶ前方で猫が横切った。
書店では雅各布の梯子だけ見て、
虚代の果実たちを無視して店を出た。
途中ストロングをと立ち寄ったが、
買ったのは牛乳とホットケーキまん。
二度と虚代の果実たちは要らないとなれば、
ホットミルクが格別に美味しかった。
花粉症の小さい花が久しぶりに訪れ、
カードの暗証番号が違い戯れに逮捕された。
珍しく前の通りを車が過ぎて、
見送りが二度止まった。
常夜の鳥が、
遠くで小さく鳴いている。
一面を焼畑にして収穫得たいと娜娜に頼む、
彼女は任せろと約束した。
常夜では無花果とオリーブ畑も、
それと桑原を彼女は持っているらしい。
その桑原が、
娜娜と2人限の逃げ場でありますように。
常夜に娜娜が刈り取りて、
虚代が塔に月る隠る。
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