ブランコ

財津達也

663文字

日曜日の夕暮れ、息子と公園でバドミントン。その隣でカラのブランコが・・・。中原中也「サーカス」のフレーズに在りし日の祖父の姿が重なりました。

日暮れまで息子と二人でバドミントン

隣で空のブランコが

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

そうして今日も暮れました…

 

幾時代かがありまして

茶色い戦争ありました

 

ボクの爺ちゃん飛行機乗りで

しばらく大陸暮らしをしてました

黄河の空を渡るとき

視界がパッと開けるのだよと

こっそりボクに話してくれました

どこかに爆弾を落としての

帰りの空の道だったのでしょう

話す爺ちゃんの顔 暗かった

 

幾時代かがありまして

冬は疾風吹きました

 

飛行機乗りの爺ちゃんは

特攻隊の生き残り

若い教え子見送って

最後に自分も死ぬはずでした

なのに戦争 突然終わり

爺ちゃん独り生き残り

爺ちゃんの長い長い冬が始まりました

 

幾時代かがありまして

毎夜爺ちゃん独りきり

明日を生きねばなりません

恐い顔して黙々と

今日を生きねばなりません

 

靖国神社の鉄鳥居

そこに一つのブランコだ

見えるともないブランコだ

頭さかさに手を垂れて

あの大陸の砂の空

思い起こして ゆやゆよん

 

屋外は真っ闇 闇の闇

幾時代かが過ぎました

 

爺ちゃんの旅は鹿児島知覧と靖国神社

何度も足を運びます

ただ沖縄だけには行けないと

頑なに恐い顔をしていました

ノスタルヂアなど何処にある

と言わんばかりの悲しみの顔

九十二まで生きて死に

もう何年になるでしょう?

 

日暮れまで息子と二人でバドミントン

見えるともないブランコが

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

2011年4月29日公開

© 2011 財津達也

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