日常。(5)

日常。(第5話)

mina

小説

1,290文字

いつもは私があなたを待っているはずなのに

今度はあなたが私を待ってくれているみたい

 

ドアをノックして部屋に入るとそこには‥

「こんにちは」

「あ、初めまして」

ガウンを着て、すっかりくつろいでいる男の人がいた

「今日僕、このホテルに泊まるからさ‥あなたが来るまですっかりくつろいじゃったよ

ごめんね、こんな格好で」

そう言って笑ったその人は髪の毛がもうだい

ぶ無く、ほとんどハゲに近い状態で、歯並び

は悪く前歯が2本程抜けていて‥

‥見るからに“おじさん”だった

「 ‥ 」

私がお店のお部屋でお客さんを待っている状

態の時は‥お店の中だったから、安心感もあ

ったし、“おじさん”のことも相手に出来た

何となくお店全体が、お部屋の中が“秘密の

空間”みたいなカンジがしたし、その中でエ

ッチなことを‥フェラチオをしたりキスした

り‥するということが“特別”な気がしたか

ら‥

‥こういう“おじさん”とも出来たのかも知

れない‥

 

でも今はお客さんが待っている場所、ホテル

に私がエッチなことをしに行くのだ

そしてまた違う空間、リアルな所で、“接客”をしなければならないのだ

‥閉鎖的なリアルな空間は私に嫌悪感を与え

てくるし、そこで待っている人がこんな“お

じさん”だとかなりへこんでしまう

「もう1回、2人でお風呂に入ろうか?」

「そうですね、入りましょうか」

イソジンとかタイマーとかローションとかグ

リンスとかがあったって、そこは‥

“ラブホテル”に違いないのだ

 

お風呂がジェットバスで、照明が赤や緑に変

わっても、

‥ちっとも楽しくない‥

「 ‥ 」

“おじさん”と向かい合わせになって浴槽に

入る

‥おじさんの目は優しそうかも知れない‥

 

「僕いくつに見える?」

「‥素直に?見たままで?」

「うん」

「54歳ぐらい?」

「‥ショックだなぁ」

「あ、ごめんなさい」

「いや、いいんだよ‥実はね今日は僕の50歳の誕生日なんだ」

“おじさん”はずっと1人身で“自由”に暮

らしているのだそうだ

「じゃぁ今日はお祝いですか?」

「あぁ寿司食って来たよ」

私は“おじさん”に少し同情してしまった

「今、かわいそうって思ったでしょう?僕のこと」

「えっ‥」

「‥君みたいな子を指名して良かったよ」

そう言った後“おじさん”は私を後ろ向きに

立たせて‥

いろんなところを触ってきた

その指の感触は“痛く”感じた

「やっ‥」

「この“おじさん”誕生日に“独り”でかわいそうって思ったろ?」

「 ‥ 」

「いいねぇその“同情”がたまらなくカンジるよ」

「 ‥あっ 」

おしっこを我慢してた私は、そんな“おじさ

ん”のクリトリスの触り方に過敏に反応して

しまって‥

「嫌っ!」

「 ‥ 」

とてつもない快感の後、お漏らししてしまったのだ

あまりの恥ずかしさに泣いてしまった私を見

た“おじさん”が‥

「綺麗に舐めてやろう」

「 ‥ 」

お漏らしの後を優しく舐めてくれた

そしてまた私はカンジてしまうのだ

「んっ‥」

 

「じゃぁ私、お店に戻ります」

“おじさん”の部屋に置いてきた名刺の裏に

私は‥

《お誕生日おめでとうございます 私があなたの誕生日を誰よりも祝福します》

って書いた

 

end

 

 

2014年6月2日公開

作品集『日常。』第5話 (全70話)

© 2014 mina

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