日常。(8)

日常。(第8話)

mina

小説

1,181文字

いつも長いプレイ時間をとって私を指名してくれる人‥

「 ‥ 」

でも最近“この人”に逢うのが辛い

 

「来たよーいつものおじさん」

「あ‥うん」

「どした?」

「何でもないよ」

お店の中でも有名になる程、毎日のように私を指名してくれる人

だけど‥

 

「こんにちは」

「‥待ってたよ、さぁ今日も楽しませてもらおうかな」

“この人”はいつも私を‥

 

「店長、ちょっと相談があるんですけど‥」

「おぉどした?」

「いつも長い時間とる、金髪のおじさんのことなんですけど‥」

「あぁ‥あの親父か、あいつがどした?」

「 ‥ 」

「何かされてんのか?」

 

店長に相談したところで結論は見えているの

に‥誰かに相談せずにはいられなかったみた

いだ。そして私自身がそうされる事に悦びを

カンジてしまっているという、どうしたらい

いかわからない感情を誰かにぶつけたかったのかも知れない

‥私と“あの人”の秘密であって欲しい

 

「今日はね君のオナニーしてるところを撮りたいんだ」

店長に相談したらこう言われた

『オプション料って言って金をとれ』

 

「 ‥ 」

「‥そうだったね、いつも通り君にもお金を支払わなくちゃね」

‥お金はもらっていた、最初から

「ここに置くよ」

お金は“この人”から充分過ぎる程もらって

いた、ここにお金は溢れているのだ

毎日のように私の所に逢いにきてエッチなと

ころを“この人”はデジカメで撮って帰って

いく

「ピンクローターもあるから」

「 ‥ 」

「いやらしいところ魅せてよ」

「 ‥ 」

 

撮った写真は自分のコレクションにすると随

分前に“この人”は言っていた

でも正直に言ってしまえば不安だった。写真

は残ってしまうから

それに女の子のエッチな写真は商品になって

しまう

‥でも私は“この人”に撮るのを止めてと

中々言い出せずにいた

「そう、その君のいやらしい表情が好きなんだ」

「 ‥ 」

“この人”に撮られることに快感を覚えてし

まうようになっていた

 

「もっと足をひろげて」

「上目使いでこっちを見て」

「髪をかきあげて」

「‥舌を出して」

 

セックスしてるわけでも、カラダを愛撫され

てるわけでも舐めまわされてるわけでもない

‥ただ“この人”に撮られているだけ

「いやらしいなぁ‥その表情」

なのにものすごくカンじる

「もっと魅せてよ、僕に」

イってしまいそうになる‥

「‥スキだよ」

「あ‥」

私はイってしまった

ピンクローターの音だけが耳に残る

 

「僕はね君を撮っているときが1番楽しいんだ」

「 ‥ 」

「‥生きてるって感覚があるんだ」

 

ピンクローターはまだ動いている

「ちゃんとオプション料とりましたか?」

「あ‥」

ホテルから店に戻ったら店長が心配してくれ

ていたみたいだ

「もう撮るの止めてくださいってちゃんと言

いました」

店長には嘘をついた

私と“あの人”の秘密だから

 

end

 

2014年6月26日公開

作品集『日常。』第8話 (全70話)

© 2014 mina

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